「神童、手、離して。」

拒絶されたとでも思ったんだろう、嫌々と首を横に振り、手には更に力を入れられる。違うのに、

「大丈夫だから、離して。」

優しく、出来るだけ優しく言った。神童は嫌そうだったけど、渋々という感じで離してくれた。手を離して、腕の痛みを無視して、神童に抱き着いた。

「!!?き、霧野っ!?」

慌てて抱き着いた俺に腕を回して、足に力をいれて踏ん張ったようだ。顔だけ上を向いて神童を見る。霧野、なんで、そんな声は聞こえないよ、聞こえてるけど。

「神童、嫉妬してたの?」

大きく目を見開いて、顔をまた真っ赤にさせた。どうやら図星の様で口をパクパクと動かしている。違うとか、そうじゃなくて、とか色々言ってみてるけど全部嘘なのは分かりきっている。

「ふふっ、神童、金魚みたい。」

神童の顔を見て笑うのは可哀想だと思ったけどこれは仕方ない。笑った俺を見て神童は目をぱちくりと瞬きをした。金魚?頭にクエスチョンマークをつけたようなそんな表情で。

「神童、嫉妬してたの、俺もなんだ。神童だけじゃない。」

神童の頭に更にクエスチョンマークが増えたような、そんな気がした。

「さっき言ったこと覚えてるか?神童が女の子にモテるからとか、俺が女の子みたいだーってやつ。」

神童は頷いただけだった。そこにさっきまでの頭にクエスチョンマークをたくさんつけていたような神童はいなくて、真剣そのものな神童がいた。

「あれね、嫉妬の塊のようなものなんだ
、神童にとっちゃ嫌なこと言われたって感じなんだろうけどさ、俺はさ、結構真剣だったんだよ。」

まじまじと俺の顔を見られる。少しばかり恥ずかしくないのかと聞かれれば、ものすごく恥ずかしいに決まっている。そらでも、一呼吸して話を続ける。

「俺はこんな容姿だから、街で歩いてたって女の子と間違われてナンパされるし、小さい頃母さんに女物の服とか着させられたりしたし。それにさ、なんか、神童は女の子といるときはすごく優しそうな雰囲気になるからさ、やっぱり女の子のほうがいいんだなーって思ったんだ。それからは酷かったな、神童に近づく女の子全員に嫉妬してたし、女の子みたいだけど、そうじゃない自分が虚しくてさ、なんで女の子じゃないんだろうって思ったりもした。けど、嫉妬したって、自己嫌悪したって、無理なものは無理じゃないか。嫉妬して神童に当たって我が儘言って面倒臭いと思われるより、俺が我慢していればいい、神童に嫌われるなら、その方が何倍もいい。」

へにゃり、と薄ら笑いを浮かべてみた。神童はなにも言わない。

「だからさ、神童の嫉妬心なんて、俺の嫉妬心プラス独占欲に比べたらまだまだマシなの?俺のほうが言いたくなかったよ。これを聞いて神童の気持ちは変わらない?こんな醜い俺をまだ好きか?」

一筋の涙が溢れた。あ、と思う暇もなく流れ落ちた。今の今まで我慢していた涙が溢れて、もう一筋流れ出てきたところを神童が拭ってくれた。神童を見れば、優しく微笑んでいた。あの嘘の笑顔じゃない、本物の笑顔。

「何を言い出すのかと思えば、本当霧野はなにか抜けているんじゃないのか?」

まるで馬鹿だとでも言われているようで少々腹が立つ。少し睨んでやるとごめんと軽い謝罪が返ってきた。

「霧野は醜くないよ、寧ろ綺麗だ、見た目通り純粋で可愛い。俺がそんなことで霧野を嫌いになるはずがないのに、まだ好きでいるじゃなくて、更に好きになった。面倒臭いわけないじゃないか。嫉妬して我が儘を言ってくれればいい、俺に甘えてきてほしい。」

俺の涙を拭っていない方の腕で更に強く抱き締められた。神童の身体は暖かくて、冷えきった身体も心も暖めてくれるような、そんな気がした。




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