「ねぇねぇコウちゃん」
「何だ」

呼んでみただけと返すと、そうかというあっさりしたこたえが返ってきた。
なんともつまらない。

今日は私も彼も非番なので、押し掛け妻と称して彼のお部屋で勝手に寛いでいるのだが、彼は私に無関心だ。
いつも通り体をあのトレーニング機材で鍛えると、シャワーを浴び、ソファーにどっかりと腰掛ける。

私は最近執行官になったばかりなので、彼が今も必死で資料を読み漁り、良くも悪くも思いを募らせている相手の『マキシマ』とかいう男に興味はない。
でもそれはなんとなく気に入らない。
別に私はコウちゃんの彼女じゃないし、変な嫉妬心を抱くのもお門違いなんだけど、気に入らないものは気に入らない。

「…どっか行くの?」
「あぁ」

コウちゃんが資料を置いてスーツに着替え始めたので、私が問いかけると、なんともあっさりと返事は返ってきた。

「…非番でしょ?あ、まさか朱ちゃんと一緒にお出掛けするの?」
「いや、そんなかわいいものじゃない」
「えー?なにそれなにそれ、デートじゃん!むかつく!」

私が喚くと、よしよしと頭を撫でられる。宥めてるつもりらしい。
何よ、コウちゃんのバカ!

「デートじゃない。ちょっと気になることがあってな。ギノには言うなよ」
「やだ!言う!」
「…」

私がむくれると、コウちゃんは珍しく困ったような顔をした。
だめだめ!そんな顔してもだめ!

「名前」
「やだやだ!コウちゃんと朱ちゃんが二人きりなんてやだ!」
「わがまま言うな」
「だって、」

最近、コウちゃんは朱ちゃんと仲がいい。
朱ちゃんは数週間前に一系にきた新米監視官で、すごく成績も優秀なスーパーガールなのだ。
コウちゃんと並んだらお似合いだし、周りのみんなも朱ちゃんとコウちゃんはバディだね、とか言うし。

朱ちゃんのことは嫌いじゃないけど、コウちゃんが私以外の女の子と二人きりなんて仕事のときしか許せない。

「コウちゃんさ、朱ちゃんと仲良しだよね」
「そうか?常守監視官はそうは思ってないみたいだが」
「そうじゃなくて……ああもうコウちゃんの鈍感!」
「何がだ」
「…だから、」

私が目を伏せると、ぐい、と腕を引かれた。
ソファーに深く腰かけていた私はよろけてそのまま立ち上がるが、びっくりして反応に一瞬遅れてしまった。
顔を上げるとコウちゃんの顔が近くにあって、え、と漏らそうとした声は残念ながら口から吐き出されることはなかった。

何かやわらかいものが唇に触れて、すぐにはなれる。ポカンとしていると、コウちゃんにデコピンをされた。

「いたっ!何するの!」
「多分、お前がしてほしかったことをしただけだ」
「………」

そこまで言われて我にかえる。
何かやわらかいものが、触れたのだ。唇に。

「帰ったら相手してやる」

私の頭を乱暴に撫でると、コウちゃんはすぐに振り返って部屋から出ていってしまった。髪の毛がぐしゃぐしゃになってしまった。
それに、結局朱ちゃんとのお出掛けには行くらしい。

二股なんて悪い男!と私が叫ぶと、俺にはお前だけだろうが、と優しい声が返ってきた。
ちょっと面白いし、気分がいいから朱ちゃんとのデートも許すことにする。










私って寛大な女!










「どこが寛大なんだ」
「浮気を許してあげたとこ」
「浮気してない」
「してる!」
「ったく、わがままだなお前は。常守監視官はそんなんじゃないって言ってるだろ」
「わがままじゃなくて、コウちゃんのことが大好きなだけです!」
「あっそう」
「ねぇねぇ、今日泊まっていい?一応誘ってるんだけど!」
「……勝手にしろ」



















多分なんやかんやでこのあと狡噛に喰われる

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