◎いきなりちょっとえっちぃシーンがあります。ご注意!












「狡噛……ねぇ、狡噛」
「っ、待て」
「やだ…やだっ…狡噛…」

何故だ。なぜこんなことになっている?
俺は混乱していた。いやそもそもこんな状況で混乱せずにいられるか?

「ん…っ」
「こーがみ、」

俺の寝室に無遠慮に侵入してきた暁が、我慢ならないというように寝ていた俺に抱きついてくる。
どういうことだ。
何がどうなってる?
変な薬でも投与されたのだろうか。というか当たってるんだがわざとか。

「こーがみのばか!」
「は?」
「わ、たしはこんなに、こーがみのこと、好きなのに!好きなのに〜〜!!」

仰向けで寝ていた俺にマウントポジションをとると首に腕を絡めて甘えるように泣き始める。

「好きって……っちょ、どけ。お前自分が何してるかわかってんのか」
「だって…」

涙で瞳を潤ませながら頬を染めて身体を起き上がらせた俺をじっと見上げる。
なんだこれ。すげーかわいい。

「狡噛は、わたしのこときらいなの?」

俺の膝に乗ったまま不安そうに目をそらして、俺の胸元に凭れる暁。
柔らかい髪が俺の腹の辺りを滑って擽ったくはあるが、今はそんなことを考えている場合ではない。

「嫌いじゃない。むしろ…いや、だがお前は」
「やだ!それ以上言うの禁止」

今度は力強く俺に抱きついて、暁が顔を俺の首もとに埋めた。
密着しているせいで、彼女の身体のラインがはっきりわかる。
下着をつけていないのか、胸の柔らかさが彼女のキャミソール越しに直に伝わってくる。
誘っている、のか?

そっと腰に手を回すと、また綺麗な瞳が俺をじっと見つめる。期待されているらしい。
据え膳食わぬはなんとやら、というが、これは…。

「慎也」
「っ」

熱っぽく耳元で囁かれ、思わず反応する。名前で呼ばれたのは久しぶりだ。最近はずっとこいつは俺のことを「狡噛」としか呼ばないから。

「暁」
「ん…なに?」
「どういうつもりだ」

おれは待てができる猟犬だ。そうであるはずだ。落ち着け狡噛慎也。これはきっと何かの間違いで、暁はなにか勘違いをしている、そう考えろ。
あのメスゴリラがこんなに可愛いわけないだろ。いや可愛いけど、そういうことじゃない。
すごい可愛いし、個別任務のときにこいつと一緒になるとらしくなく胸が高鳴ることもあるけど、そうじゃない。そうじゃないだろ狡噛慎也。
これで一線を越えたら、明日どんな顔して仕事をすればいい。絶対縢にからかわれる。

「どうって……狡噛のことがすき」
「…」

昼間は野蛮な猟犬のくせに、こんなときだけ飼い猫よろしく腰をくねらせてねだるように俺を見るこの女はたちが悪い。

「狡噛は、わたしのこと」
「…好きだよ」

────もう知るか。

我慢ならずに散々お預けを食らった俺はそのまま彼女の後頭部を掴んで柔らかい唇に自分のものを重ねて食らい付いた。

甘い、気がする。やわらかくて、甘くて。

「ん、んん……」

唇を割って舌を入れてやると、顔を真っ赤にして少し苦しそうに俺の手を握る。
放して、という意味らしいが、もう少しギリギリまでと舌を絡ませているとまた泣き出しそうだったので、唇をはなしてやった。

「は…は…びっくりした…」

どうやら初めてだったらしい。
そう言えば、こいつは確か10歳のときに既に潜在犯扱いだったはずだ。となるとやはり処女なのだろうか、これからすることに戸惑いを感じているらしい。
というかやり方もわかっていないのか、首を傾げている。

だが、息を荒らげながら目尻の涙をそっと拭うその仕草は間違いなくさ女のものだ。身体はしっかり女なのだ。心と身体の年齢が伴っていないというのはなんだか扇情的で。
もう一度軽く口づけると、少し抵抗されたので唇を舐めるだけにとめた。

「…いいのか」

何も知らない彼女は、俯いて頷いた。
顔は真っ赤で、どうも本人も恥ずかしいらしく、目をあわせようとしない。普段と違ってしおらしさ全開というギャップに少なからず俺は少し舞い上がっていた。

俺の膝からおろして肩を押すと、簡単にベッドに横たわる。
ふわりと舞った髪が静かに広がった。
顔の横に手をついてじっと見ると、物欲しそうな目で俺を見る。

「…どうやるの?」
「どう、とは」
「痛い?志恩が初めては痛いっていってた。やり方は教えてくれなかったから…わかんないんだけどね。この前の、おんなのひとみたいに…」

…こいつは性教育という勉強を教えてもらわなかったのだろうか。
今や十代ならみんな学校教育で習う分野だが。

「…」
「ねえ、慎也、レイプとセックスの違いってなに」
「……」
「私と慎也が今からするのはセックスだよね?レイプじゃないよね?」

だが単語だけは知ってるらしい彼女は、不安げに俺をじっと見ている。
この前のおんなのひとみたいに…とさっき言っていたのは常守監視官の配属初日に起きた事件の被害者のことだろう。報告書によると、確か強姦されていたはずだ。

「…合意の上でなら、強姦にはならない」
「へえ」 

こいつは性行為をなんだと思っているのだろう。というかこのムードでそういうこと言うか普通。

……否、普通じゃないからこいつも執行官になったのか。普段はしっかりした印象を見受けるが、蓋を開ければただの幼い少女に過ぎないのかもしれない。
その二面性が暁のサイコパスの犯罪係数を上げ、色相を濁らせているなら、酷く不毛だ。

純粋、無垢、無邪気、は時に残酷だ。例えるなら幼いこどもが蟻を意味もなく踏み潰して殺す残虐さに似ている。
彼女は大人ぶってはいるが、実際はきっと無知で無垢で無邪気で、そして純粋な幼子に過ぎないのかもしれない。
恐ろしいほどまでに空想的な自分と恐ろしいほどまでに現実的な自分が共存するというのは、自己の精神コントロールが難しい。
彼女は必死に大人になろうとしているのに、周囲の大人が知識を与えないからこうなったのだろう。

「なら、いいよ。…慎也の好きにして」

だから、俺が教えてやろう。
最初から最後まで余すところなく男と女の真実を、刻み付けてやろう。
躊躇いなく暁のキャミソールに手をかけようとしたその時、











「ちょっと狡噛、いつまで寝てるの!」










スーツ姿の暁が頬を膨らませて俺を見下ろしていた。

「……」
「何その顔。もう七時だよ?いつもなら起きてるくせに今日はどうしたのよ。寝坊なんて珍しい」
「…あぁ」
「ちょっと、聞いてる?」
「ん…」

…夢か。
それにしてもなんつー夢をみてるんだ俺は。このメスゴリラを抱く、夢だなんて。

「…体調悪い?」
「いや」
「でしょうね。なんか幸せそうな顔で寝てたもん。いい夢見れ…」

思わずガバッと起き上がると、驚いたのか暁がビクッと肩を揺らす。

「な、なに」
「…シャワー浴びる。今朝、寝坊して悪かったな。それとよく一人で起きれたな。えらいぞ」
「いや、それは別に…」

戸惑ったような顔で目をしぱしぱと瞬きさせる暁の顎を掴んでこちらに向かせると、親指でそっと唇に触れる。

「なに…?」
「柔らかいな」

枕元に置いていたタオルをひっつかむと、そのままバスルームへ向かった。
情けない。何であんな女に欲情してるんだ、俺は。
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