2周年企画 | ナノ


雲一つない晴天、そんな日は調査兵たちにとっては訓練日和だ。まさに今日全班合同の訓練を行う日。調査兵団の全班が集結し立体機動や対人格闘など普段とは違った環境、雰囲気で訓練に臨めることが合同訓練のメリットである。

「ペトラー!こっちこっち!」
「ナマエ!一緒に訓練なんて久しぶりね」
「班が変わってからめっきりだったもんね〜」

ネス班に所属するナマエとリヴァイ班に所属するペトラ。彼女らは同期であり何度も死線を掻い潜ってきた仲間。久しぶりの合同訓練とあって開始時間までの間嬉しそうに会話に花を咲かせる。

「あれ、ナマエ、また胸大きくなった?」
「え、変わんないと思うけどなぁ」
「前より主張が激しい気がする」
「気のせいだってば」
「彼氏に揉んでもらうと大きくなるって言うよね」
「ちょ、変なこと言わないでよっ」

ペトラはナマエの胸元を見て羨む視線を送る。人並みより大きい方のナマエは兵団服とベルトを着用するとシャツから弾けんばかりの胸が主張している。キャッキャと女性特有の話で盛り上がる二人の周りにはもちろん男性兵士がいてチラリ、チラリとその豊満な胸元に視線が送られる。そして話で盛り上がる二人は気付いていないがそこにはもう一人、ゆらりとドス黒いオーラを放つ人物の姿が。

「(チッ……どいつもこいつもナマエのことを変な目で見やがって。クソが)」

キレ長い瞳に刈り上げた髪、小柄な体型の男───そうリヴァイだ。恋人同士であるリヴァイとナマエ、付き合う前もその後も彼女が大切で堪らない彼が周りを巻き込むことを厭わず、独占欲や嫉妬心を剥き出しにし被害者が出ることもしばしば。

「ナマエ」
「あ、リヴァイさん!」
「へ、兵長!」

リヴァイの登場により、ナマエの胸元を見ていた男らはそそくさと退散。ペトラは少し緊張気味に、ナマエは少し嬉しそうに敬礼の構えを取った。

「いい、直れ」
「リヴァイさん、どうしてここに?」
「…たまたまだ」
「訓練前に会えて嬉しいっ」
「(ば……バカップル…!)」

訓練前だと言うのに相変わらず盲目な恋に翻弄される二人。ペトラは引きつった笑みを浮かべた。そんなこんなで訓練が開始されたのだが、先程ナマエの胸元を見ていた男らは鍛錬との無理やりな名目でリヴァイに滅多打ちにされる羽目となる。








「リヴァイさん、お疲れ様です」
「…ああ」

朝から始まった訓練が終了したのは夕刻。水分補給を行っているリヴァイの元にナマエが駆け寄ってきた。彼女が走ればその振動により揺れる胸。リヴァイは心の中で舌打ちをすると周囲にナマエを見ている男がいないか鋭い視線で見渡した。そこへ偶然ハンジがいることに気付く。

「やぁ、リヴァイ。今日も相変わらずな鬼教官っぷりだったね」
「……ハンジか」
「ハンジ分隊長!お疲れ様です」
「やぁ。ナマエもいたんだね、直っていいよ」

リヴァイの視線に気付いたハンジが呑気に笑いながら二人の元へ。敬礼の構えを取るナマエにハンジはそっと彼女の腕を掴んで降ろさせたのだがそれが気に入らない男は眉間にシワを深く刻む。

「気安くナマエに触るな、クソメガネ」
「はは、その独占欲丸出しなところも相変わらずだね、リヴァイ」

同じ人間なら一瞬にして怯みそうな鋭い視線もハンジ相手にはほとんど通用せず、へらりと笑って見せる。もう彼にとってそれが慣れっこだからだ。

「ナマエも気苦労が絶えないねぇ」
「リヴァイさんにそれだけ愛されてるってことだから苦労なんてしてませんよ」
「ナマエもナマエで相変わらずリヴァイのことになると変わらないなぁ」

呆れたようにハンジは肩を竦めて笑う。リヴァイもナマエのこととなると周りが見えなくなってしまうが、ナマエもリヴァイのことになると目にハートが浮かび上がり幸せなオーラを放つ。この男にしてこの女あり、だ。

「あ、今日の訓練でリヴァイさんの立体機動見たんですけど、やっぱり何回見ても軽やかで速くて素敵だったなぁ」
「ナマエも以前より腕を上げただろ。苦手だと言っていた対人格闘が良くなっていた」
「わぁ、リヴァイさんに褒めてもらえるなんてとても嬉しい〜!」
「うっわ……あなたたち私の存在忘れてない?」

訓練でのリヴァイの姿をうっとりしながら語るナマエに部下として恋人としてナマエのことを褒めるリヴァイ。ハンジの存在は最初からなかったことにされていた。

「ねぇ、リヴァイ、ナマエ?」
「ナマエ、行くぞ」
「どこへ?」
「俺の部屋だ。風呂貸してやる」
「はーい!」
「………はぁ」

リヴァイはナマエの腰に手を添えて、上官専用の宿舎へと歩き出す。その場に残されたハンジは溜息を一つ。きっと部屋に行き湯浴みをした後はお楽しみが待っているであろう二人に少しだけ腹が立ったハンジ。

「やーい、バカップル」

ぴったりと寄り添って歩く二人の後ろ姿を見て、意地悪く舌を出してそう言ってやった。


2020 1124


藍歌様へ
この度は企画に参加して頂きありがとうございました!セコム、モンペ設定はたぶん初めて書くシチュエーションだったのでこれでいいのだろうか、と震えております。笑


mae tugi 8 / 8

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