2周年企画 | ナノ


誰にも信じてもらえないような、不思議な出来事が起こった今日。ナマエはあれから仕事の僅かな空き時間を縫って何度か資料室を訪れたが二度と部屋が変わることはなかった。

「(本当に、何だったんだろ…)」

湯浴みを済ませラフなワンピースに着替えた後、薄暗い兵団の中を歩きながら今日の出来事を振り返った。よく知った資料室が真っ白で何もない空間になり偶然居合わせたリヴァイとキスをする展開になったあの時。数時間経った今でもキスの感触や彼の逞しい手のひらが胸や足を弄った感覚が消えていない。むしろ思い出しただけで心臓が早く脈打って顔に熱が集中してしまう。

「………」

ナマエはそっと人差し指を唇に当てた。

『大丈夫だ、優しくしてやる』
『お前、かわいいな…』
『今は俺だけを見てろ』
『…今夜、俺の部屋に来い』

残る感触と共にまるで恋人同士のような甘い言葉に勘違いしてしまいそうだった。一時の感情だろうと思いながらもナマエはとうとうリヴァイの部屋の前に辿り着いた。何ら変わりない木の扉のはずなのに何故か威圧感を感じノックしようと上げた右手はそのまま空を切る。

『必ず来い』

最後に言われた言葉を思い出すも、本当は来てはいけないのではないかとナマエを躊躇わせる。期待している自分と上司と身体の関係になるのはいけないと思う自分がいて、扉の前から動けない。やっぱりやめようかと踵を返したその時────

「きゃ…!?」

扉が急に開いてそこから伸びてきた手に捕まり、状況を理解する間も与えられずそのまま部屋へと引き摺り込まれてしまった。すぐに扉は閉ざされ密室となった部屋。

「り……リヴァイ兵長…」
「遅せぇ」
「すみません…」
「…まぁいい」

部屋の主であるリヴァイは機嫌が悪いようだ。彼は掴んでいた腕を離すと着いて来いと顎をしゃくって促した。ナマエは不安と期待とを心に秘めながら後を追う。綺麗に整えられたベッドの前に着くと次はそこに座るよう促される。皺一つないシーツの上に座ることに恐れ多さを感じながらも、失礼しますと一言伝えて座ればリヴァイも隣に腰を下ろした。

「…よく来たな」
「え……」
「来ねぇもんだと思っていた」
「…来いと言ったのは、兵長です」
「そうだったか」

先程までの不機嫌さはどこへやら。ふ、と僅かに笑うリヴァイに思わず見惚れるナマエ。部下からは恐れられていることが多い彼がこんな顔もするのだと初めて知った瞬間だった。

「だが、来たってことはお前も少しは期待してるんだろう?」
「う……そんな、ことは、」

ない、なんて言えなかった。キス一つで恋愛感情に近い気持ちが芽生えて本来なら来なくても良かったはずなのに、ここへ来たのは紛れもない自分自身の意思だからだ。ふいっと顔を逸らしたナマエの顎に手を添えてリヴァイは己の方へと向き直らせる。

「へ、兵長…?」
「続き、シたいか?」
「…ッ!」
「俺はシてぇ」
「……!」

真っ直ぐに目を見て伝えられた言葉。それを拒否することも肯定することも出来ずにナマエはただ顔を真っ赤に染めてリヴァイから目を逸らせないでいる。

「ぁ…!」

リヴァイはナマエの肩を押し、そのままベッドへ押し倒す。か細い手首をシーツに縫い付け、まるで小動物を狙う狼のように舌なめずりをする。ギラついたグレイの瞳は怯える彼女を見つめて離さない。するっとリヴァイの右手がナマエの頬、首筋をツツーッと伝い、その指は胸の上で止まった。

「ひ……あ、あの…ッ」
「ここに来た時点で、この先する行為は同意の上と見なす。いいな」
「…ッ」

ぷち、ぷち、と前開きのワンピースのボタンを一つずつ外されて胸はドクンドクンと強く脈打つ。はだけていく度白い肌が露わになりリヴァイの理性を揺さぶった。ボタンを全て外されてリヴァイの手が下着にかかった時、ナマエは思わずその手を掴んだ。

「ま……待ってください…!」
「あ?」
「………あの、」
「今更止めるつもりはない」
「いや、その……」

動きを止められたリヴァイは眉間にシワを深く刻んだ。ナマエはドキドキと収まらない鼓動を目を伏せて落ち着かせ、一呼吸置いてから再度彼の顔を見上げた。

「…わたしのこと、尻軽な女だと思いますか?」
「急に何だ」
「キス一つで好きかもしれないなんて勘違いして…のこのこ部屋に来る女で、いいんですか?優しくするって言ったの、変わらないですか…?」
「………」
「………」
「チッ、めんどくせぇ」
「め…!?」
「ナマエ」
「んんッ…!?」

名前を呼ばれたかと思うとすぐに重なる唇。角度を変えて何度も何度も啄まれる。手首を縫い付けていた左手が一旦解けたかと思うと指と指を絡ませながら繋がれて、それがまるで恋人同士のようでナマエは握り返した。

「ん、は……ンン…」
「ッ……息継ぎは、出来るな?」
「んうッ、はッ…!」
「いい子だ」

息継ぎをさせ、すぐにまた重なる唇はもうどちらのものかわからない唾液でテラテラに濡れていた。啄むだけのキスに飽きたリヴァイは舌でナマエの唇を無理やり割って侵入させる。お互いの舌を絡ませて求め合えばチュクチュクと水音が響く。

「ぷぁッ…!」

ようやく解放されたが既にナマエの息は上がっていて肩で息をする。濡れた唇と紅く染まった頬、潤んだ瞳はリヴァイの欲を更に掻き立てるだけだ。それを今はどうにか抑え込んで口を開く。

「めんどくせぇ……だがそんなところも悪くない」
「…?」
「一度だけ言う。興味のない女を抱く趣味はない」
「え……それはどういう…?」
「はっ、わからねぇか」
「……」
「わからねぇならそのまま抱かれろ」
「あッ…!」

ブラジャーはたくし上げられ、胸が露わになる。握られていた手は離れ、その手で片方の乳首を摘まれれば快感が全身を駆け巡る。

「あ、ぃ…ッあン…」
「綺麗な胸だ」
「あぅ…!」

もう片方の乳首はリヴァイの口に吸い込まれ、舌で転がされる。二つの快感に犯されるナマエは甘い声を出しされるがままだ。声が出てしまうことが恥ずかしいナマエは両手で口を塞ぐ。

「ん、んッ、はぅう…」
「口、塞ぐな」
「や…やだ…」
「声聞かせろ」
「やぁ…ッ、あッ」

乳首を口から離すとナマエの手を引き剥がしてすぐに乳首を強く摘み上げる。そうすればより一層甘く高い声が部屋に響いた。

「んっ、ぁ、あぁ…」
「そうだ、もう塞ぐんじゃねぇぞ」
「ぁあ……ッあ、そこは…!」

リヴァイの手はナマエの腹を伝って下着越しにワレメをなぞる。そこは既に下着越しからでもわかるくらい湿り始めていた。

「ここがどうした?」
「や、そこは……汚…ぃ、です…」
「汚くねぇよ」
「ああッ!」

グリッと強く陰核を触られれば、誰にも触られたことのないそこは胸よりも強い快感と羞恥心がナマエを翻弄した。

「こっからが本番だ」
「ッ…」

下着を取り払われてアソコが外気に触れる。リヴァイの視線を感じるだけでソコはじわりと疼き、熱を孕んだ。入口をそっと指でなぞれば溢れた愛液がリヴァイの指に絡み付く。

「昼間の続き、楽しもうか」
「ひぁあ…!」

濡れた指で陰核を擦られて、感じたことのない快感がビリビリとナマエを襲う。足を閉じようとしてもリヴァイの手が太ももを掴んで阻止して叶わない。ゆっくりと上下に擦られて身体を捩るも気持ち良さから腰が浮く。

「…やっぱりお前、かわいいな」
「や、あぁああッ…!」
「もう聞こえてねぇか」

初めて得る快感にナマエはもうリヴァイの声などほとんど届いていないようだった。昼間はとんだ邪魔が入って中断を余儀なくされてしまったが今なら邪魔もきっと入らない。その気になった男女が密室で二人、リヴァイは目の前の彼女を優しく抱いてやろうと心に決めた。

「あ、ひゃ、あああッ」
「(あれだけのことで惚れちまうとはな…)」
「んぁッ、あ、兵長ぉ…!」
「ナマエ」
「は、あ、あ、んッ、ぁあ…!」
「ナマエ、イけ」
「ひぁッ、あぁああッ、ぁああ!」

この気持ちは、抱いてから伝えても遅くないだろうと達しながらしがみついてくるナマエを見て僅かに口角を上げた。


2020 1012

サクヤ様へ
この度は企画に参加して頂きありがとうございました!短編の続編ということで考え出すところからワクワクして、楽しんで書かせて頂きました。


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