進撃 | ナノ


温かい温度に包まれてナマエは目を覚ます。重たい瞼を何度か瞬かせると視界が馴染み、目の前には綺麗な顔で眠るリヴァイが映った。それと同時に昨日の情事が思い出され、頬が熱くなった。

「………」

普段は簡素な椅子で眠ってしまうくらい睡眠欲がないリヴァイ。生まれついた先での壮絶な過去のせいもありいつも気を張っていて、熟睡することはほとんどない彼が珍しくナマエよりも眠っている。

「…わたしには安心してくれてるのかな」

そう思いたい、と眠るリヴァイの頬に触れようと手を伸ばしたその時。

「…え。なに、これ」

腕に無数の紅い痕。驚いて思わず全身を確認すると胸、腹、足と身体全体にその痕が広がっていて自分では見えないがきっと首や背中にもあるとわかる。きっと昨日の情事後、先にナマエが眠ったことをいいことに付けたのだろう。すると隣で眠っていたはずのリヴァイが動いた。

「………」
「り、リヴァイ!」
「何だ、うるせぇな」
「何だじゃない!何よこれ!」
「痕だろ」

この痕を残した犯人はただ一人しかいないと、ナマエは寝起きのリヴァイに詰め寄った。すると当の本人はあっけらかんとして言い切ったのだ。

「そんなことはわかってるの!服で見えないところはともかく、何で見えるところまでつけちゃうの!?」
「痕は見えなきゃ意味ねぇだろうが」
「見えなくていいよ!」

むくっと上半身だけを起こしてセットされていない前髪をワシワシと掻き乱すリヴァイに訴え続けるも、最早相手にしてもらえない。その仕草がかっこいいだとか、鍛え抜かれた身体がやらしいだとかそんなことは入って来なかった。

「もう、信じらんない」

身体中に散りばめられた紅いそれは、ナマエの白い肌に映えてまるでルビーのようだ。そう比喩すれば聞こえはいいのかも知れないが問題はそこではない。立場上、新兵を指導する身でもあり教育上にもよろしくないものを見せることなんて出来やしない。消すことは諦めてどう隠すかをまだ起きて間もない頭で必死に考えた。

「おい」
「なにッ…!?」

リヴァイの手が伸びてきて後頭部を捕らえると、そのまま引き寄せられて交わる2つの唇。時間にして7秒程のフレンチなキスだったがそれだけで昨日のことを思い出してしまう。

「は……リヴァイ、」
「痕、嫌か?」
「嫌ではないけど……場所は考えてほしいかな」
「………」
「……ッ」

リヴァイの指がナマエの鎖骨付近にある痕をツゥっとなぞる。くすぐったさに思わず肩が跳ねたがそれに構わず彼の指は痕を辿っていく。

「ちょ、」
「感じてんのか?」
「違うから…!」
「ほう…これでもか」
「ひぁッ?!」

痕を辿っていた指がピンッと故意に乳首を跳ねた。既に固くなり始めていたそれに刺激が加わることでナマエは先程までとは違う反応を見せる。リヴァイは嬉しそうにニヤリと笑った。

「も、リヴァイ、やめてよ…!」
「感じてねぇんだろ。だったらいいよな」
「だっ…だめだって!」

リヴァイの指は痕を辿ることに飽きたのか、乳首を摘んだり引っ張ったりと遊び方を変えてきた。ナマエがやんわり彼の腕を掴んで止めようとするもビリビリと感じる刺激から、あまり力が入らない。

「ッ、ぁ…!」
「………」
「ふ…ッン、」
「……全部俺のもんにしてぇ」
「ひぅ…!」

低く呟かれた言葉と共に乳首を摘んでいた指にぎゅっと強めの力を加えられ、身体は嫌でも反応してしまう。リヴァイが呟いた言葉の意味と無数に痕を残した理由が今理解でき、快感に浮かされながら彼の首に腕を巻き付けて抱き着いた。

「ナマエ?」
「………は、」
「!」

痕を付けたことに怒り、抵抗をしていたナマエが甘えるようにリヴァイの首元に顔を埋めたかと思うと肩にじわりと痛みを感じて、リヴァイの身体が少しだけ動いた。

「……てめ、」
「……リヴァイだって痕付けたでしょ」

ナマエが首元から顔を離し、お互いの視線が交わる位置に来る。リヴァイの肩にはくっきりと歯型が残っていた。

「さっきはああ言ったけど、わたし別に痕残されるのが嫌じゃないから」
「………」
「わたしだって、リヴァイを独占したい」
「…そうかよ」
「リヴァイもそうでしょ?」
「…柄にもなく、そう思っちまうな」
「いいんだよ、わたしも同じだから」

乳首を弄っていた手がナマエの頬を包む。それを合図に再びキスが交わされた。

「ン……」
「…ナマエ、」
「こんな世界なんだから、目の前の幸せにくらい貪欲になっちゃおうよ」

ね、と笑顔で首を傾げるナマエ。今この時間が幸せで忘れかけていたが彼らが生きる世界は美しくありながらとても残酷なところだ。そんな中で手にした僅かすぎる幸せ。それを逃したくないのは皆同じなのだ。だからリヴァイは痕を残すという行動で愛や独占欲を示していた。

「…そうだな」
「でしょ」
「じゃあ」
「え?」

突然ぐりんと視界が回り、気付いた時にはナマエはリヴァイに押し倒されていた。

「朝の一発、ヤるか」
「は!?ちょっと待ってよ、」
「あ?目の前の幸せに貪欲になるんだろ」
「そう言ったけど、これは違うでしょ!」
「違わねぇよ」

逃げられないよう苦しくない程度に乗せられた体重、ベッド、お互いに一糸纏わぬ姿。これらが意味するのはナマエに拒否権や逃げ道はないということだ。

「ちょ、もうすぐ始業時間じゃ…」
「あと1時間と少し。これだけあれば一発は軽い」
「それはリヴァイだけだから!」
「大丈夫だ、加減はしてやる」
「へ、あ、嘘でしょーーー!?」

その後、1時間のうちに2回も抱かれてしまったナマエがどうなったかは当人たちのみが知る。


2020 0811


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