「聞いたか?リヴァイ班全滅だってよ」
「嘘、また?」
「何年か前にも似たようなことあったらしいぜ」
ヒソヒソとわざとらしく会話をする駐屯兵。
特別作戦班───通称リヴァイ班は第57回壁外調査にてリヴァイを残して全滅した。表向きはエレンの巨人化試験を兼ねたウォールマリア奪還の拠点の開発、しかしその裏側は調査兵団内に潜んでいるスパイを炙り出すことだった。調査兵に身を扮したスパイにグンタが殺られ、後に姿を露わにした女型の巨人の正体を掴もうと挑むがリヴァイが認めた実力を持ってしても、エルド、ペトラ、オルオも還らぬ人になってしまった。一度捕らえることに成功するも結果は失敗に終わった。
「クソ、言いたい放題言いやがって」
「まあまあ、ジャン落ち着いて」
リヴァイ班の、調査兵団の苦悩や辛さを知ろうともしないで言いたい放題な駐屯兵らに苛立ちを隠さないジャン。それをアルミンが宥めるがその隣でエレンも大きな猫目を見開き、後悔から来る苛立ちを隠せずにいた。そんな彼をミカサは悲しげな瞳で見つめた。
「おい、お前ら」
「リヴァイ兵長!」
リヴァイと共に見知らぬ女性がエレンらのところへやって来た、と言うよりも通りすがった。苛立つ雰囲気を察したのか珍しくリヴァイが声を掛ける。不思議に思いつつも敬礼のポーズを取るとすぐに直れと言う。彼が現れたことで近くにいた駐屯兵はそそくさとその場を去って行った。
「兵長、そちらの女性は…?」
アルミンが問うとリヴァイはその女性に挨拶をするよう顎をしゃくって無言で促した。女性はにこりと穏やかに笑った。
「リヴァイ班、班員のナマエよ。あなたたちの話は兵長から聞いてるわ」
「リヴァイ班?!兵長の班はこないだの調査でみんな…」
「言ってなかったな。こいつはあの調査には参加していない」
「な、何故ですか?壁外調査は調査兵全員参加のはずじゃ…」
「こいつは調査兵だが、俺らとは別ルートで探りを入れてもらってる」
「…噂で聞いたことがあります。兵長の右腕として影で働く優秀な兵士がいると」
「ッ…!?」
顔色、声色何一つ変えないリヴァイにエレンらは驚きを隠せないようだ。人類最強と謳われる彼が認めた程の実力の持ち主なら壁外調査に同行した方が戦力も上がるはずなのに、と。
「あ!」
「エレン!?」
「ッ!」
エレンは今初めて出会ったナマエの胸ぐらを掴み、グリーンの瞳に怒りを宿して睨み付けた。ミカサやアルミンらの声は最早届いていない。
「兵長が認める程強いならッ、あんたもあの調査に参加してりゃ…ペトラさんたちが殺されることはなかったかもしれないのに!女型の巨人を捕まえることが出来たかもしれないのに!!」
「…!」
「エレン!それは言っちゃダメだ!」
「あんたもリヴァイ班なんだろ!?班員殺されて平気なのかよ!」
「エレ───」
感情が高ぶり、もう周りが見えていないエレンは相手が自分よりも経験があり立場が上の人間だろうが関係なく、不躾な言葉を投げ付けた。アルミンが止めようとするもそれより先にエレンの身体が浮き、そのまま背中から床に叩き付けられる。
「ぐあッ…!?」
「エレン!」
「ミ、ミカサ!」
「ふーん。巨人化出来るって聞いてたからどんなものかと思ったけど、まだまだね。そんな甘っちぃ考えじゃあっという間に死ぬよ?」
エレンを投げ付けたのは彼よりも低身長のナマエだった。リヴァイが何か動きを見せると思っていたアルミンやミカサは思わず呆気に取られている。ジャンに至っては先程までは鼻の下を伸ばしていたのに今は青ざめて目を逸らした。
「ナマエ、こんなガキ相手にするな。行くぞ」
「はーい」
エレンを床に寝転がらせたままナマエは立ち上がると歩き出すリヴァイの後ろに着いて行く。状況が上手く飲み込めないエレンらはしばらくその場を動けずに上官2人の背中を見送った。
「クソ……何だってんだよ」
「さっきのはエレンが悪いよ」
「アルミンに同じ」
「…私も、そう思う」
「うぁッ…!?」
ガン、と鈍い音が室内に響いた。
あれから2人はリヴァイの執務室へとやって来た。本来ならば次の作戦へ向けての話し合いだったり溜まった書類を処理したりとするのだが、部屋に入った瞬間何故かリヴァイに閉じた扉に乱暴に押し付けられたのだ。
「り……リヴァイ?」
「黙ってろ」
「ちょ、待って…!」
リヴァイはギラリと三白眼を光らせ、ただ無言でナマエの衣服を取り払っていく。その瞳には今どんな感情が宿っているのかわからない。
「あっ、やだ!」
僅かな抵抗も虚しくナマエの着ていた服やベルト等全てを取り払われ、一糸纏わぬ産まれたままの姿になる。どうして、と聞くまでもなくリヴァイは彼女の豊満な胸を両手で鷲掴みながら片方の乳首に吸い付いた。
「ん、はぁあッ…!」
吸われるだけでなく、舌で押されたりこねられたり甘く噛まれたり。大きな快感と小さな痛みにナマエは声を我慢することが出来なかった。
「はっ、胸弄っただけでもう濡らしてんのかよ」
「ンンンッ…やぁ、」
「この淫乱が」
「ふッ、あ、ぃああッ……おかし、いよ…!」
「別におかしくねぇだろ。恋人同士なんだからな」
乳首を咥えつつ乱暴な言葉で的確に攻めていく。何を焦っているのかリヴァイの手はもうナマエの下肢に伸びて薄らと濡れたワレメを指でなぞった。彼の言う通り2人は恋人同士であり、行為をすること自体はおかしくはない。けれど普段、リヴァイはこんなに雑に抱いたりしないのだ。ナマエが大事だから壊してしまわないように優しく丁寧に抱くのに今の行為はまるで正反対だった。
「おらッ、」
「ひぁああッ!」
両手首はリヴァイに掴まれて扉に縫い付けられて自由が利かない。反射的に閉じようとする細い足の間に彼の逞しい足が割り込んできて、下肢に付いている突起物を擦るように動かしてくる。布とベルトの境目に当たるように擦られてはナマエもただ喘ぐしか出来なかった。
「いッ、ぁ、あ…!」
「おいおい、足で感じてんのかよ」
「ン…ぁあッ!」
快感から力が入らない代わりに愛液は溢れ、それが潤滑油となって更に刺激を強めていく。リヴァイのズボンは見てわかるくらいに染みていて色が変わっていた。
「あぁ……リヴァイ、」
目の前には服を纏ったリヴァイ。自分だけ脱がされていることが今更恥ずかしくなって顔を覆いたくなるがそれが叶うはずもない。名前を呼べばリヴァイの瞳が一瞬だけナマエの視線と交差した後、グリッとまた強く突起物を足で擦られた。
「ひゃああッ!」
緩んでいた快感が一気にナマエの全身を駆け巡り、思わず腰と顔を反らした。今感じているのは足なのに、リヴァイの細長い指でもなければ逞しいモノでもないのに、と。
「足が相当気に入ったみてぇだな」
「あ、んぁ……や、だ…」
「1回イッとけ」
「ひぁッ、は、あぁあ!」
足が離れたことでグラッと揺れる身体。それはいとも簡単にリヴァイによって支えられて今度は彼の指が愛液を纏って攻めてくる。足とは違った小刻みな動きにナマエはもう限界寸前だった。
「や、もッ、イく…!」
「やらしくイッてみせろよ」
「ンッ……ぁあああ!!」
指で攻められて間もなくナマエは甲高い喘ぎ声と共に達してしまった。
「…エロすぎだ」
「ぁ、は、はぁ……は…」
ビクビクと身体が痙攣した後ぐったりとリヴァイの肩にもたれ掛かるナマエを見て彼は満足そうに愛液に塗れた己の指をべろりと舐めた。
「り、ばい…」
「……」
「もしかして、駐屯のやつらが言ってたこと…気にしてる?」
肩にもたれ掛かり、ナマエは息を整えながらリヴァイに問うた。恋人になって随分長いがこんなにもリヴァイが自分本位で彼女を抱くのは初めてだったからそれが気掛かりだった。
「………」
「あっ」
リヴァイはその問いに答えることなくナマエを姫抱きにしてベッドへと連れて来ると先程とは違い優しい手付きで降ろし、押し倒した。しかしすぐに手を出して来る訳でもなく何かに追い詰められたような表情をする彼にナマエは心配になって、名を呼んだ。
「リヴァイ」
「………」
「言いたくなかったらいいの。気が済むまでわたしを抱いて?」
ナマエの手のひらが優しくリヴァイの頬を包んでやんわりと撫でる。それが心地好いのか彼は目を細めていた。
「辛かったよね。実力を認めた部下たちがあんなにも簡単にいなくなって……3年間大事に育てた新兵がスパイの正体で……何も知らないくせに駐屯たちからあんな風に言われて」
「………」
「わたしは、リヴァイが誰よりも優しくて繊細なの知ってるから。誰が何と言おうとわたしはリヴァイの味方だから」
リヴァイの頬を包む手のひらにきゅっと小さく力が入り、ナマエは今日初めてのキスを送った。短く触れるだけなのにそれはそれはとても温かかった。
「…ナマエ」
「リヴァイ」
「悪かった。乱暴にして…」
「ううん、気にしてないよ」
まるで獣のようなリヴァイに少なからず恐怖心もあっただろうに、ナマエはそれを見て見ぬふりをして笑った。同時にリヴァイに罪悪感が芽生えた。
「あいつらのことも……お前がガキにあんな風に言われたのも、腹が立った」
「ああ、エレンが言ってたこと?わたし気にしてないから大丈夫」
「お前が気にしてなくても俺が気にすんだよ」
「そう?」
「……お前だけは、」
「え?」
「…何でもねぇ」
ぎゅっと、距離を埋め乱暴にしたことを償うようにリヴァイはナマエを強く抱き締めた。周囲からは誤解されがちだが誰よりも仲間を失うことに敏感で誰よりも仲間を想っている彼。けれど一番は自分の右腕であり恋人であるナマエを失うことが怖いのだ。
「ん、そっか」
「悪い。少しこのままでいさせてくれ」
「いいよ」
「………」
「気が済んだら、続きしようね」
「…ああ」
リヴァイがナマエに初めて見せた弱い部分。人類最強と言えど彼だって人間なのだ。リヴァイがリヴァイでいられるのはきっとその傍らで彼を想い、支えているナマエの存在があるからに違いない。
2人はしばらくベッドの上で抱き合ったままお互いの体温を感じていた。
2020 0807
mae tugi 41 / 60