蝋燭の僅かな灯火が隙間風によってゆらりと揺れる。薄暗い室内にはギ、ギシッとベッドが軋む音と男女の艶めいた声が響いていた。
「ぁ…兵長…ッ!」
「ッ、ナマエ…」
「ンンッ……へい、ちょ…おッ…」
「違う…リヴァイ、だ」
「は、ぁン……りばいさッ、ん…!」
ベッドが軋む以外にも、2人の舌が密接に絡み合う水音がちゅくちゅくと鳴る。リヴァイは自分よりも小さいナマエに覆いかぶさり、一方の手はお互いの指を絡ませ、もう一方は彼のゴツゴツした手が彼女の細い手首をベッドに縫い付けている。ナマエはジャケットを脱がされてシャツはボタンを外され、かわいらしい下着とたわわな胸が露になっていた。
「ふ、んん……ぁ、」
「ッ……ン、」
「…ッ、ぷぁ…!」
「はっ……随分上手くなったもんだ…」
どれ程の時間重なっていたかわからない唇がようやく離れて、名残惜しそうに銀色の糸がリヴァイとナマエの唇を繋いでいる。彼の言葉にナマエは更に顔を真っ赤にし、ふるふると首を振る。
「もう何回俺に抱かれてんだ。そろそろ慣れろ」
「や、そんなの…むり、です…!」
「ま…それはそれで悪くないがな」
「ぁ、ンッ!」
手はそのままに、リヴァイの顔が少し下にずれてちゅうっと音を立ててナマエの首筋に吸い付いた。2人は身体を重ねるのが今回が初めてではない。もう付き合って5ヶ月───初めて抱かれたのは付き合って10日後だった。まるで狼のように変貌したリヴァイは獲物を捕らえて嬉しそうに笑みを零しながら子羊のように逃げ惑うナマエを抱いた。激しくて、少し手荒で、それでいて優しさと甘さを忘れない、そんな抱き方だった。それから身体を何度も重ねているが未だにナマエは慣れずにいる。いつまで経っても残る初々しさが更にリヴァイの欲を掻き立てた。
「へ、ちょう…ッ、そこに、痕は…!」
「呼び方、戻ってる」
「んぁッ……リヴァイさんッ、だめッ、」
「ふ、ナマエの声……やべぇ」
「みっ、見られ、ちゃう…からぁ…!」
「見せつけりゃいい」
「はンッッ…!!」
ナマエの言葉なんて聞かないリヴァイは首筋だけでは飽き足らず、鎖骨や胸にもたくさん吸い付いて紅い花を咲かせていく。その度にちゅっちゅっとリップ音が鳴ってナマエの羞恥心を煽る。
「ナマエは俺のモンだってわからせるにはちょうどいい。お前が泣いて嫌がったって、離してやる気はさらさらねぇからな」
「ン、」
普段は絶対にこんなことを言わないリヴァイだが、行為中にはたくさんの甘い言葉をくれる。一見ムードなんて考えそうにない怖ヅラの男だがナマエにだけはどうしても甘く、単純になるらしい。それはリヴァイがナマエを溺愛している証拠であり、彼女もまた彼の堪らないギャップに溶かされていた。
「ナマエ、ナマエ…」
「り、リヴァイさん…ッ」
リヴァイの唇が今度は上に移動し、額、瞼、鼻先、耳朶、頬、顎とゆっくりとキスを落としたり甘噛みしたりする。薄い唇からは彼の体温が如実に伝わり、触れる度にぴくっと震えてしまう。そして再びリヴァイの唇がナマエの唇を狙った時だった。ふいっと彼女が顔を逸らしたことによりキスは空振りに終わる。
「あ…!」
「………」
「ち、ちが……」
「何故避けた」
「リヴァイさん…」
ナマエが顔を元の位置に戻せば明らかにご機嫌ななめなリヴァイ。それを弁解する為にナマエは肘を支えにして僅かな時間だけだが顔を上げ、触れるだけのキスを自分から送った。
「ッ…!」
普段も、行為中も、ナマエからあまりキスをすることがない為リヴァイはその珍しい行動に少し驚きながらも嬉しさから唇が思わず緩んだ。
「あの……何度もリヴァイさんに抱かれていくうちに、自分がはしたなくなってる気がして…。こんな女、嫌じゃないかなとか、嫌われたりしないかなとか………考えてしまうんです…」
顔はリヴァイの方を向けたまま目を伏せて言えば、彼の手にぐっと力が篭ったのがわかった。
「…チッ、俺をそんなに煽りやがって……どうなっても知らねぇぞ」
「きゃ…?!」
ぐ、と重たくない程度にリヴァイがナマエに体重をかけてパンパンに膨らんだ股間を彼女の股にぐりぐり押し付ける。硬いそれはズボン越しでも十分に熱が伝わった。
「はしたねぇとか、嫌われるとか、んなこと考えんじゃねぇ。そんなこと俺は思ったこともねぇし、そのままのナマエだからイイんだ、わかるな?」
「ッ…リヴァイさん…」
「愛しいから抱く。それだけだ」
「…はい」
「お前も、そうだろ?」
「もちろん……わたしもリヴァイさんが大好き」
「じゃあ何も気にすることはねぇ」
表情は変わらずとも優しい声色はナマエの不安をすぐに溶かしていく。思わずぽろりと零れた涙をリヴァイはすぐにキスで拭った。
「ここまで煽られてんだ。悪いが今夜は寝かせてやれねぇ……いいか?」
「…はい、リヴァイさんだから……大丈夫です」
「やめろと言われても、もう止まれねぇからな」
「は、い…ッンンン!」
ナマエの言葉を飲み込むように唇に噛み付いた。それを合図に2人の長い夜が始まった。
2019 1014
mae tugi 21 / 60