からころきらきら
A組寮。凜那の部屋にて。
「みんな何持ってきたー?」
「私はポテチ!」
「私はチョコレートにしたわ」
「えっ、美味しそー!」
「いいですね!」
「まあ、美味しそうなものばかり」
「早速開けようよー!」
土曜日の夜。凜那を含むA組の女子メンバーでお菓子を持ち寄ってプチパーティを開こうと発案したのが、葉隠。それに賛成し、今回はあみだくじで決まった凜那の部屋ですることになったのだ。
「ジュースは?」
「ありますよ」
「わーい!あたしカ〇ピス!」
「私は烏龍茶で…」
「響香ちゃん、これでいいかしら?」
「うん、ありがとー」
机いっぱいに持ち寄ったお菓子を開いて、紙コップに好きなジュースを注げば準備は完了。明日は学校は休みの日曜日。何もないからゆったりとできる。こんなところ、相澤先生に見つかれば怒られそうだが、楽しいことはやめられない。
「かんぱーーーい!!」
一斉にコップを掲げてカツン、と合わす。それからぐびぐびと勢い良くジュースを飲み干していく。みんないい飲みっぷりだ。
「はぁー!それにしてもさ、最近バタバタしてたからようやくゆっくりできるね」
「そうね。爆豪ちゃんが攫われたり、寮に引越したりいろいろ大変だったわ」
「大変だったけど無事に済んで本当によかったです。もうあんなのは懲り懲り…」
「そうですわね…。私たちももっとゆっくりヒーローになる為の勉学に励みたいですわ」
最近の出来事を振り返りながら話す。今だからこそこうやってわいわいと話すことができる内容だが、当時のことを思い返せば本当に大変だった。
「そーだよねぇ……あ、これ美味しい」
「どれどれー?」
「ほんとだ、美味しい!」
「ふふん、それ持ってきたのウチ!」
「響香ちゃんが?ありがとうございます」
ぱくり、またぱくりとお菓子がみんなの口の中へ消えていく。普段はヒーローの卵として勉強に実践にと励んでいる彼女たちもまだまだ15、6歳の少女たちなのだ。
「え、待って!凜那ちゃんの部屋プラネタリウムあるやん!」
「わぁ、すごーい!本格的!ほんっとーに星好きなんだねぇ」
「ふふふ。1回つけてみましょうか?結構綺麗なんですよー」
「え、つけてつけてー!見てみたいし、どんなのか気になる!」
小型のプラネタリウム機に付属のディスクをセットし、角度を調節してスイッチをオンにする。それから部屋の電気を消すと―――
「わぁーー!!!」
部屋の天井一面に映し出された星空に、全員から声が上がる。ゆっくりと星空が回転していてまるで大草原の真ん中で本当の星空を見ている気持ちになる。時折ランダムに流れ星が流れたりと家庭用のプラネタリウム機にしてはかなりクオリティが高い。
「こうして見てると、心が安らぎますわ」
「いいなー!私も欲しいけど高くって!」
「お茶子ちゃんも星、好きだったわね」
「これだけのクオリティだと高そうだよねー」
「うんうん。軽く3万とかしちゃったりして」
「さ…3万て……大金やないかーい」
「って、麗日!?」
「お茶子ちゃん!?」
“ 3万円 ”のワードに反応した麗日は初めて寮を見た時と同じように思わず気を失いかける。
「調べてみたけど、この型だとこれだけのクオリティでも8千円くらいだそうよ」
「そ、それでも大金やないかーい」
「麗日……」
ちょいちょい、と人差し指でスマホを操作しながら答える蛙吹に再度気絶しかける麗日。それぞれ皆個性があって楽しい空気が流れている。
「凜那ってさ、個性出現した時ってどんな感じだったのー?」
部屋の電気をオンにしに行った凜那に芦戸が問い掛けた。パチ、と小さな音と共に暗かった部屋は一気に明るくなり、目を馴染ませるようにみんなが瞬きを繰り返す。
「わたし、最初は天秤座しか出せなかったんですよー」
「え!そうなの!?」
「そう。だからわたしも両親も天秤を創り出すだけの個性だと思っちゃってて。しかも5分経ったら消えちゃいますしね」
少し照れたように昔の話をする凜那。彼女の個性が出現したのは3歳の時のこと。両親とふたご座流星群を見ている時に急に使えるようになったという。
「しかも天秤出してんのに見てたのふたご座流星群なんだ…」
「おかしいですよね。まぁ、今となっては笑い話なんですけど」
「あはは!確かにねー。他の星座はどうやって使えるようになったの?」
「小さな頃から星は好きで。図鑑とかで調べたりしてるうちに、ですね」
「へー、おもしろい成長の仕方やったんやねぇ」
昔話をしながらお菓子をどんどんつまんでいく。たくさんあったお菓子も既に半分くらいなくなっていた。
「みんなの小さい頃の話っておもしろいねぇ」
「わたしの他にも、みんなのも聞いてみたいです」
「じゃあ次誰いく?じゃんけんで決めちゃおうか?」
「いいですわ。例えじゃんけんでも負けませんわよ!」
じゃーんけーん、と葉隠の音頭と共に開かれるじゃんけん大会。ぽん!の掛け声と共にそれは一発で勝敗がついた。
「ケロケロ、次は私ね」
「チェッ、負けちゃったかー」
「梅雨ちゃんの昔話、期待です!」
「そうねぇ……あれは私が5歳の時だったかしら」
そうして夜は仲良く更けていく。楽しい楽しい女子会はまだまだ始まったばかりである。
2019