テイルズ | ナノ


空に浮かんでいた忌々しい星喰みはユーリたちの活躍により、精霊へと姿を変え満天の星空の中を駆けて行く。それはまるで宝箱から弾け出した宝石のように綺麗だった。

「終わったんだね」
「ああ、終わったんだな」

気の抜けたようなナマエとユーリの声が小さく響く。デュークは先にその場から姿を消したが、ユーリたちはまだ空を見上げていた。本当に自分たちで世界を救い、これからの世界のあり方を変えて行く───信じられない気持ちもあるがこれが現実なのだともう動かなくなった魔導器が物語る。

「終わったんじゃないわ。これからやることがたくさんあるのだからむしろ始まりよね」
「そうだよ!僕らのギルドも忙しくなるから覚悟しててよね!」
「げぇ〜、おっさんこき使われる感じ?年寄りは大目に見てよね」

ジュディスは相変わらず落ち着いた面持ちで、カロルは小さな拳を強く握り締めながら言う。レイヴンは顔を青くしながら項垂れた。各々の個性的なリアクションに先程の激闘を忘れてしまう程、普段通りだと全員が安堵した。

「私たちもそろそろ行きましょう」
「やるべきことの前にたっぷり休みたいわ」
「リタ姐に同意なのじゃ〜」
「ワフゥ」

エステルのその声を合図に皆が踵を返して歩き出す。フレンもそれに続いて歩き出そうとした時、服の裾を掴まれて軽く後ろにつんのめった。

「…ナマエ?」
「へへ、ごめんね」
「どうしたんだい?」

振り返れば裾を掴んだ犯人のナマエが。フレンが彼女に向き直るとナマエは申し訳なさそうに笑って言った。

「あのね。フレンとの未来が終わらないんだって思うと嬉しくて」
「終わらせる訳ないじゃないか。約束しただろう?星喰みを倒したら結婚しようって」
「もちろん覚えてるよ。でも本当にそれが叶うんだって思ったら…」

嬉しさから込み上げる涙を我慢出来ず、ナマエの白い頬を一本の筋を描いて流れていく。星に照らされたナマエはフレンの瞳にとても綺麗に映り、彼の心臓はドキッと跳ね上がった。

「ね、フレン?」
「…?!」

流れた涙はそのままに、ナマエはフレンの服の胸元を掴んで引き寄せてお互いの額をこつんと合わせた。フレンは膝を曲げ前屈みの態勢になりぶつかった額からじんわりと温もりが伝わる。

「わたし、フレンが大好き」
「ああ。僕もナマエが大好きさ」

想いを告げ、数秒間見つめ合う。そのまま自然な流れで触れるだけの簡単なキスをした。

「ふふふっ」
「あははっ」

キスをするのは初めてではないはずなのに、まだ気恥ずかしさが残りフレンもナマエも顔を赤らめて照れ笑いを浮かべた。

「ナマエー!フレン!早くしないと置いてっちゃうよー!」

先に進んだ皆の方からカロルの元気良く大きな声が響いた。2人の世界から引き戻され、近かった距離が少しだけ遠くなる。

「行こうか、ナマエ」
「うん!」

フレンが差し出した手をナマエが繋ぎ、二人一緒に仲間の元へ駆け出した。


mae tugi 21 / 30

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