妊娠したことを報告した話
鷹見啓悟
「……え?今何て?」「だから、妊娠したの」驚いて言葉が続かない啓悟にもちろんあなたとの子だよ、と続ける名前。「……嬉しくない?」「そんなわけなか!!」と被せ気味に叫ぶが啓悟の頭の中には幼い頃の記憶が蘇る。ぶっ壊れた両親と過ごした決して楽しかったと言えるものではない幼少期。虐待は連鎖すると聞いたことがある。そんな自分が家庭を持っていいのかという思いと大切な名前とはこの先もずっと一緒にいたい、苗字を重ねて夫婦に、家族になりたいという矛盾した思いを抱え、何て言葉を返せばいいのか迷っていた。「啓悟は啓悟でしょ?」「…!」優しい声でそう名前は言った。「啓悟が怖いと思ってることもわかるよ、でもそれはわたしが絶対にさせない。今の啓悟なら大丈夫」「……俺、父親になれんのかな」「きっといいパパになるよ」不安なのは名前も同じなのに支えようと、啓悟の過去さえも一緒に背負おうと気丈に振る舞う彼女を見て啓悟は堪らず名前を抱き締めた。「啓悟?」「今、顔見せられん。みっともない顔しとるから」「そっか」「名前、ありがとう」「うん」「パパにしてくれて、俺の隣にいてくれて、ありがとう」「こちらこそ。啓悟だから好きになったんだから。一緒に乗り越えようね」名前もそっと啓悟の背中に腕を回す。女である名前にここまで言わせておいてうじうじしている場合ではない。「名前もお腹の子も守るんは俺の役目やけん、俺に守らせて」まだ小さすぎる我が子を前に啓悟は誓う。何があってもこの2人は守り抜く、と。
轟焦凍(プロヒ設定)
「焦凍、わたし妊娠したの」「に、ん……しん?」「赤ちゃん、出来たの」「ほ、本当か?」「ほんとだよ」「俺と、名前の……」妊娠したことを告げると焦凍は左右非対称の瞳を大きく見開き、たどたどしい言葉を発した。恐る恐る右手を伸ばして名前の腹に触れる。「ふふ、まだわかんないよ?」「ここに、いるんだな。俺たちの子が……」「うん、そうだよ」嬉しい気持ちと複雑な気持ちが入り乱れる。それもそうだ、焦凍の幼少期はいい思い出があまりない。主に父親が原因だが和解した今でも幼少期の記憶が消えることはない。姉弟たちともろくに遊べず訓練ばかりの毎日、父のせいで母が狂い熱湯を掛けられたこと。そんな父と同じ血が流れる自分にこれから産まれてくる子どもをちゃんと育てていけるのか不安だった。「名前、俺、すげぇ嬉しいんだ。けど……こんな俺が父親になれるのか…?」不安を吐露すれば名前の表情も曇っていく。焦凍の過去を知っているからこそ自分のことのように胸が痛む。「俺、俺……」「大丈夫。焦凍は一人じゃない」腹に乗せられた焦凍の右手を両手で包むようにして握ればお互いの体温が伝わる。「記憶が消えることがないのはわかってる。けど焦凍は自分自身で乗り越えたんだから」大丈夫だよ、と名前は笑ってみせた。「名前……」「それに焦凍は誰よりも優しい人だから。これからのことも2人で乗り越えよう?」笑顔なのに今にも泣きそうな名前に焦凍もぐっと込み上げる何かを感じた。名前の小さい手の上から左手を乗せて力を込める。「ありがとな……情けないところを見せちまったが、俺だってもう父親だ。しゃんとしねぇと子どもに示しがつかねぇよな」そう言って笑う焦凍に名前もただ頷いた。過去は消せないけれど未来は創ることが出来るのだから、幸せな家庭を作ろうと2人で決意した。
焦凍もホークスも幼少期の頃親との思い出があんまりいいものではないから悩みそう
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