おそろいが嬉しい話


鷹見啓悟
彼とのお揃いが欲しくてインナーカラーに赤を入れた名前。「啓悟くん!見て!」「わ」美容院から帰って早速啓悟に見せびらかす。「啓悟くんの剛翼と同じ色にしてみた」「うん。似合っとうよ」「ほんと?」「ほんとほんと」と啓悟は嬉しそうに赤に染まった髪の毛を一房取りそれに口付ける。「可愛いことしてくれるねぇ」「これでわたしも空飛べたらなぁ」なんて冗談を言えば「そいは俺ん役目やけん名前は飛ばんでいいんよ。俺に任せてくれればいーの」と啓悟は目を細めて笑う。次の日染めた色が少しでも落ちにくくなるように市販ではなく美容室専用のカラーケアシャンプーやトリートメントなどをプレゼントする啓悟の姿があった。「ちょっとでも長く俺とのお揃いが持つように、ね」「嬉しい、ありがとう啓悟くん!」でも持っても1ヶ月から1ヶ月半。いつかは落ちてしまうカラー剤に寂しさを感じて啓悟は今度はお揃いのピアスでもプレゼントしようと手で顎をなぞりながら考えた。


爆豪勝己
付き合っている勝己と何かお揃いが欲しいが彼はそういうものが好きではなさそうという思い込みから言い出せずにいて。「ねぇねぇ勝己くん」「あ?」「勝己くんの真似ー」「………」少しだけ、いや、半分以上ふざけて人差し指で両目尻を上に吊り上げて勝己と同じツリ目にして見せてみた。「何やっとンだ」案の定、勝己からは呆れたような声が返ってきた。「いや、勝己くんとお揃いしたいなぁって思って」「何で目を揃えンだよ」「だってお揃いのストラップとかマグカップとか、勝己くんそういうの嫌いそうじゃん」と素直に伝えれば「……別に嫌いじゃねェ」「え。そうなの?」想定外の答えに名前は鳩が豆鉄砲をくらったような顔をする。「お前とならな」と目を合わせず、少し頬を赤くして言う勝己にこんなことなら早く伝えれば良かったと思った名前。「じゃあ今度お揃い見に行こうよ」「わーった、次の日曜な」とお出掛けも決まっちゃう。そして次の日曜日、お揃いのストラップとお揃いの部屋着用パーカーを買って満足する名前。


轟焦凍
寒い冬の日。外に出ると数秒もしないうちに手足の先から冷えていきぶるりと身体を震わせた。「さみぃのか?」「うん。手袋忘れちゃって」と両手を擦り合わせながら言う名前。焦凍はこんなに北風が吹く日だと言うのに顔色ひとつ変えていない。半分の個性のお陰だろうか。「手、貸してみろ」と焦凍は名前の両手を取り自らの左手で包む。「うわ、冷てぇな」「冷え性だから余計にね」焦凍の手はやはり温かくて気持ちがいい。「…でも俺の右手と同じだ」氷結の個性を使う右手と名前の冷えた手を同じだという焦凍に「じゃあ今温めてくれてるから今度は左手と同じになっちゃうね」と返せば「お揃いってこういうことか?」と返ってくる。カップルはお揃いのものを持つという情報をどこかから仕入れたらしい。「そうかもしれないね」お揃いとは違う気もするが今はそういうことにしておこうと握られた手を見て微笑み、今度お揃いの手袋でもプレゼントしようかなと考える名前だった。

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