HAPPY HALLOWEEN 2021


爆豪勝己
「あ"?」トリックオアトリートと言ったら敵並みの形相で睨み返された。それでもめげない名前は「ハロウィンだよ。お菓子持ってないなら悪戯するよ?」と続けた。「ハッ!テメェが俺に悪戯だと?随分舐められたもんだなァ」「いいから。早く。ないの?」「飛びっきり甘いのくれてやらァ」と先程より少し楽しそうな表情になって名前へ近づき、後頭部に手を置いてそのままぱくりと唇を食べた。「んっ、んーーー!!!」突然のことに名前はパニック。唇を食んだり勝己の舌が名前の歯列をなぞったりするそれはまさに夜にするような甘ったるいものだった。つい夜を思い出してしまい余計に身体が熱くなる。「ぷはっ……」唇がようやく離れて名前が勝己の顔を見るととてつもなく勝ち誇った笑みを浮かべていたので、勝己には勝てないなと思った。


轟焦凍
「トリックオアトリート」「え」真顔で手を差し出してくる焦凍に名前は少し困惑した。だって焦凍はこういうイベント事にはかなり疎いと思っていたからだ。「焦凍くん、ハロウィン知ってたんだ…」「クラスの女子が言ってるの聞いた」「ああ…」そこでようやく合点がいく。とりあえず用意していたチュッパチャプスを渡すと焦凍はあからさまにガックリと肩を落とした。「え?飴、嫌いだった?」「いや、そうじゃねぇけど」「なに?」「お菓子もらったら、悪戯出来ねぇ…よな」と言うもんだから「最初から悪戯目当てやったんかい」とクラスの誰かさんばりに突っ込んでしまった。でもしょんぼりしてる焦凍が少しだけ可哀想に思えて「悪戯はまた今度ね」と背伸びをして頬にキスだけ落としてそそくさと逃げて来た。その夜悪戯リベンジしに来た焦凍に捕まり、今度こそ悪戯をされた名前の姿があったことは2人以外知らない。


鷹見啓悟
仕事から帰ってきた啓悟を出迎え玄関先でハグを交わしリビングへ。「トリックオアトリート!」「はい」「え、早っ!」早速ハロウィン定番の台詞を啓悟に言うと秒でポケットからチロルチョコが出てきた。こんな時でさえ速すぎる男、と悔しそうに名前が呟けば「なんばそれ…」と笑って言う。「じゃあ次、俺ん番。トリックオアトリート」「ちょ、ちょっと待って!」「10秒だけね」啓悟がカウントダウンをする横でポケットを探る名前だが入れたはずのお菓子が見つからない。「…2、1、はい時間切れ」「嘘…!」絶対入れたのにと嘆く名前だが目の前の男はもう待てないと言わんばかりに名前を抱き締めた。「さぁて、どげんして可愛がってあげよかなぁ」と獲物を捕えた猛禽類のような鋭い目付きからもう逃げられるわけがなかった。一晩しっかり悪戯され続けた名前は次の日の朝、おかえりのハグをした時にバレないように入れていたお菓子をポケットから抜き取られていたことを知り、かなり怒ったが何だかんだ啓悟に甘い名前は「悪かったって。もうせんけん、許して」と甘えられて結局許してしまった。

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「見えない臓器の名前は」
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