小説おおぶり | ナノ


▽ 05:俺の隣空いてますよ


「しのーかちゃん、おはよ」

「北條くん、おはよ!」



眠い目をこすってバスの集合場所に向かうと、バスの前で点呼をしているのだろうマネージャーの篠岡ちゃんがにぱっという笑顔で迎えてくれた。それに思わず顔が緩んでしまったが、男だということを思い出して出来るだけ冷静を装った。

バスに乗り込もうと片足をステップにかけると、ドーンという効果音付きで背中に衝撃が来た。



「っはよー!!北條!ゼッコーの合宿日和だなぁ!!」

「ってーよ田島!!朝からテンション高ぇんだよ馬鹿」

「はよ、北條。なんかお前がテンション低いとか珍しいな」

「はよー巣山。いや、俺朝はこんな感じ」



低血圧だし、と言って背中の田島を振り落として、バスの真ん中の窓側に座る。

すでにバスに乗り込んでいた阿部や栄口は俺たちのやり取りを見て苦笑いしていた。阿部は鼻で笑ってた気がするのは多分気のせいじゃないけど(俺の視力なめんなよ糞阿部)


ぞろぞろとまだ未到着だった野球部員たちが乗り込んでくる。まだ全然眠くてテンションの上がらない俺は、適当に挨拶を交わした。



「泉ー、俺の隣空いてますよ」

「何だよその誘い文句、つかテンション低っ」

「ホント北條が静かだとなんか調子狂うな」

「静かでいいんじゃね?」

「大丈夫だよ花井、着く頃には元に戻ってっから。あと阿部くたばれついでに水谷も」

「なんで俺なんだよ!?」



声を荒らげる水谷を無視して、泉に「泉が隣なら安心して寝れる」と伝えると、りょーかい、という間延びした返事が返ってきた。

花井でも安心なんだけど、多分泉の方が安心な気がするんだよな。騒音的に泉のが耳に優しいじゃん。

結局、俺の回りは田島や水谷、花井をはじめとするメンバーが固まってしまい、しまったと思ったけれど幸運にも耳栓を発見した俺は、ついほくそえんだ。



「みんな揃った!?出発するからね!」



モモカンの鶴の一声で発車するバス。不意にもう後戻りできねーよななんて思ってしまう自分に違和感を感じた。


俺の勘は大抵当たる。嫌な方向にな。



「っあーー!!オナニーすんの忘れたーっ!」



前の席の田島が声を張り上げて立ち上がる。その一言で手に持っていた耳栓ぽろりと床に落ちてしまった。何…だと…?

急いで田島の行動を止めるべく泉や花井、水谷が田島を押さえつけた。

その言葉の意味を理解できてない篠岡ちゃんは「なにか忘れ物?」と心配そうに田島に声をかける。篠岡ちゃんを汚すな田島!!

いや何でもない!!と田島を押さえ付けている面子が叫ぶ。その他諸々の罵声を混ぜながら。



「馬鹿田島!!女子もいんだから考えろ!!」

「だってぇー俺オナニーしねぇと破裂して死んじゃう〜!なあ北條!わかんだろ?」

「え、は、はぁっ!?」

「っ!!」

「おおおお前!!馬鹿なこと言ってんじゃねーよっこの野球変態馬鹿が!!そんなこと一切しねーよ!死ね馬鹿ぁっ!!」


「(北條…!お前…)」



―お前、案外ウブなやつだったんだな

西浦メンの表情は顔を真っ赤にして否定している北條を見て、それを物語っていた。



「…つか、若干かわいかったのは気のせいだよな」

「あぁ、俺も思った。いや気の迷いだ忘れよう」

「北條にかわいいとか思うなんて俺達相当疲れてんじゃねーの」
『だよな』



ぷんすか怒った後、「俺は寝る!!」と泉の隣で睡眠を決め込んだ。

田島から離れてる巣山とかの近くにすりゃよかった、なんて思っても後の祭り。


勿論、巣山周辺がそんな話をしているなんて知る由もなかった。






*****






隣の泉に粗っぽく起こされてバスを出ると、なんとも雰囲気のある合宿場が俺達を迎えてくれた。

顔がひきつっている面子もいるが、俺は逆。断然楽しみだった。まだ寝起きだからテンションがイマイチだったが、まあ時間が経てばどうにかなるだろう。


荷物を下ろして、モモカンに指示されてまずは合宿の掃除を開始。

トイレ掃除したり電球換えたり食器洗ったり。やることは多そうだ。



「ほい、三橋。やることないならぞーきんしよーぜ」

「あ…北條くん…」



うろうろして手をもて余していた三橋を見つけて手に持っていた雑巾を手渡した。三橋は俺を見て高速で顔を縦に振った。

あー、三橋面白いな。



「あ、三橋くんと阿部くんは別メニューね!北條くんも来る?」



そういって突然現れたモモカンは三橋の肩を掴んで俺にニッと笑った。肩を掴まれた三橋はびくぅ!!と大袈裟にビビっている。えー、掃除サボれるなら有り難いけど…。



「北條ー!!ゲンミツに俺と雑巾かけしょーぶしよ!!」

「…というわけなんですみません」



そう監督に頭を下げると分かったわ、と監督は笑って行ってしまった。元より、バッテリーの問題を解決する魂胆だろうに、それに俺は必要ない。


…モモカンはどこまで知っているのだろうか



「北條ーっ!!」

「あーハイハイ五月蝿いな!静かにしてくれ!耳に響くー!!」



とりあえず俺はコイツに振り回されること決定みたいだ。





*****

下品≠下ネタ(´^ω^`)
下ネタはキャパ外みたいです

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