肌白いなあとか、やっぱ綺麗だよなあとか、噛みついてしまいたいだとか。ぐるぐる頭のなかに浮かんでは消えるそれらを総括すると、ただ一言の「汚れた感情ですね」といったふうな文句で済んでしまうのだろう。
それでも俺はやっぱりあいつを欲しいわけで、だからこの気持ちを消せるのかといえば無理に決まっているのだから、本当にどうしようもない。崇高さやら清純さやら、まあ半分くらいが俺によってかけられたフィルターなのかもしれないけれど、そういうものを全部踏み越えて触れてしまいたいと。

「馬鹿げてるよな」

いっそ縛り付けて自分のものにしてしまいたいだとか。生憎背後から腕を回しているせいでその顔は窺えないが、ベンチに座り俯く彼はきっといつも通りの呆れた表情で俺の手を睨んでいるのだろう。
しなやかに鍛えられた高潔な左腕をそっと撫でて、するりと掴んで持ち上げる。予想していた抵抗がなく若干拍子抜けしたものの、それでも筋肉が硬直したのが掌へ伝わってきて、あやすように耳元で囁けば少しだけ緊張がやわらいだ気がした。

「ごめんね真ちゃん、大好きなの」

右腕は逃げられないように首に絡めて、掴んだ彼の手首に唇を近づける。舌をちらつかせて軽くくすぐると、右腕に唾を飲み下す喉のふるえが伝わった。ああ、後でその真白い喉にもかぶりつきたい。
そのままねっとりと舌を這わせて、僅かな冷たさを孕んだ手首を舐めあげる。背中に押し付けた胸の鼓動がテンポをあげていくのを他人事のように感じながら、尖った骨に口付けた。

「お前はなにがしたいのだよ」

「んー?」

じう、と音を立て柔らかい肌を吸う。唾液のせいでしっとりとしたそこに赤い花が一輪咲いて、ぞくぞくとしたものが背筋を這い上がってきた。

「俺かあ。俺は、」

右の掌を真ちゃんの胸に撫でる。そうしてにんまりといやらしい笑みを顔に張り付けて、もう一度骨を型どった皮膚の先へ唇を落とす。

「真ちゃんが欲しいんだよ。自分のものにしちゃいてえの」

なんてな。朱に染まった頬の無垢さを眺めながら、ああやっぱり馬鹿げてるなあと思った。



(だって君はもうとっくに僕のものなのにね)
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