う〜、満員電車嫌だ〜。休日だからと油断した。
でも、これから愛しの斎藤さんと映画デートだもん♪ まあ我慢できるかなっ。
ドアに立つ私と、その後ろに立つ斎藤さん。その顔を見ようと振り返れば、何故か渋い顔をする愛しの彼。
?と思っていると、電車が大きく揺れ、斎藤さんの隣に立っているおじさんの手が、斎藤さんのお尻に張り付いたのを発見!
何!? その状態は!? これは幻!? いえ、私朝から酔っ払ってなんかいないし...。
不自然じゃない程度に観察していると、電車の揺れに合わせて、このオヤジ斎藤さんのお尻を触ってやがる!
怒りMAXっっっっっっっっっっ!

「このっエロオヤジ、その手を離しやがれっ!」

そう絶叫し、ヤツの手を掴む。
混雑した車内で、一斉にこっちを見られたが、そんなの関係ない。
幸いすぐに駅に到着し、こちら側のドアが開いた。

「斎藤さん、とりあえず降りますよ。やい、てめぇも降りろ。駅員につき出してやる!」

「なまえ、落ち着け...」

「十分落ち着いてますよ、斎藤さん。」

と油断していると、掴んでいた腕をはがされ、オヤジが逃亡した!

「てめぇぇ、待ちやがれっ!」

ローヒールでダッシュし、オヤジを捕まえ、座り込んだヤツに、今度こそ逃げられないよう、スリーパーホールドをかけた。

「なまえ、落ちるぞ...」

「大丈夫です。チョークぎりぎりですよっ。それより、駅員さんを呼んで下さい。」

「あ、あぁ...」

斎藤さんを見送り、ホームにいる人達が、遠巻きに見てるな、などと思っていると、

「...ぐっ、はな...せ...」

と、まだ逃げようとしている。

「てんめぇ〜、まだ抵抗するか!だいたい斎藤さんのお尻を触りまくるなんて、なんて奴なんだ。私だってまだ触って無いんだぞ!あ〜、ここがリングだったら、テメェなんぞ、ロープに振ってローリングソバットして、ジャーマンスープレックスホールドを掛けてやるのにっ!いや、脳天から落とすバックドロップがいいかもっ!」

「うっ!」

興奮してしゃっべていると、つい力が入った様で、落ちる寸前だったみたい...。



あれから、駅員さんに引き渡し、少々事情を聞かれた為、映画の時間に遅れたので、先に、昼食を済ませることにした。
適当な店を選び、案内された席に座ると、

「なまえ、大丈夫だったか?」

「斎藤さん、私は平気ですよ。それよりあのエロオヤジ、お尻を触ってたんですよ! あ〜、気持ち悪い! 斎藤さんは、よく平気でしたね?」

「あ、いや、電車が揺れている時に感触があった故、頻繁だとは思ったが、故意に触られてるとは思わなかった...」

「斎藤さんほど綺麗だと、男にも狙われるんですね〜。」

「...嬉しくないぞ...」

「あはっ、そうですよね〜。」

「しかし、可笑しかった。勇ましいな、なまえは...。」

「いえいえ、そんな。」

「可笑しかったが、自分が情けなくもある。か弱い女子に守られるなど。今度は、俺に守らせてくれぬか?」

淡く微笑まれ、もう堪らない!

「はいっ、もちろんです! 頼りにしてますよっ。」

「そうか、では、映画を見終わったら、俺のマンションに来ないか? 早い時間だが、あんたと飲みながら過ごしたい。」

「もちろんですっ!」

斎藤さん、今度は私があなたの色々な所、触っちゃってもいいですか?




ー完ー


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