変な納得はさておいて気になるのは・・・。
はじめさんは有名神社からの派遣ではあるが、所詮はよそ者・・・だから地元の長老たちからはあまり良くは思われていなくて、事あるごとに重箱の隅をつつくようにあれこれ文句を言われるのです。
でも本人が天然という事もあって何を言われても気にしてはいないようだけど・・。
そんなことを考えていると・・奥からがやがやと人が出てくる。
「佐々木のご隠居様、こんにちは。今日は何かございましたか?」
私があえて丁寧に問いかけてみると
「なまえちゃん、いや・・その斎藤くんは実によくやっているから・・ははは・・もう我々が口を挟むこともないし・・な、島田さん?」
「そうですな・・・余計な事はしない方が・・。」
「そうそう、この頃は斎藤くん目当てでやった来る若いお嬢さんが増えてるみたいで縁結びのお守りがよく出ているらしいし・・本当にいい人が来てくれたと思っているんだよ。」
みな口々にいい事しか言わない・・本当にどうしたのかしら・・・
だって先ほど会った時には目を吊り上げて何か言ってやろうという意気込みさえ感じられたのに・・。
「皆さん、お疲れ様でした。」
お見送りに現われたはじめさんは満面の笑みを浮かべている。
「ではな・・。」
去って行く皆さんを見つめるはじめさん・・・いや違う・・何か黒い物が・・。
私の持って生まれた霊感では笑みに隠れた冷たい顔がしっかり見えている。
「はじめさん・・?」
「気にすることはない・・あの者たちには二度と余計な口を挟ませぬ。」
「何をしたの?」
「別に大したことはないさ・・強いて言うなら俺の情報網の勝利ってとこだな。」
「情報網?」
「知りたいか?」
「うん・・。」
「だったら明後日の朔の夜まで待て。」
意味ありげに笑ったはじめさんの口元にはちらっと牙が見えていた・・。
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