思惑通りひとりになることの出来た私は、私と同じように浴衣を着た女の子達の後をついていってみた。
すると辿りついたのは神社で、思ったとおり縁日が開かれているようだった。
京の、というより人間の縁日を見ること自体が初めてで、里の祭りとは趣が随分違うようだった。
面白そうな物や美味しそうな物がたくさん売られていて目移りしてしまうけれど、なかなかの賑わいで人間にぶつからずに歩くのが難しいほどだった。

「痛ぇ!!」

ドンッ、と肩が強くぶつかり、大げさな悲鳴に驚いて思わず振り返ると、私にぶつかった人間もこちらを振り向いて見ていた。というより睨んでいた。

「おい、姉ちゃん!痛ぇじゃねぇか!骨が折れてたらどうしてくれるんだ!」

また育ちの悪そうな人間の男だこと。
フンッ。いくらあんた達が貧弱な人間だからって、ぶつかったくらいで骨が折れるはずないじゃないの。

「あ?なんだその目は。人にぶつかったら、ごめんなさいだろうが!」
「フンッ。あなたが先に謝ったら謝ってあげてもいいわよ」
「何だとコラァ!」

人間の男が私の顎を乱暴に掴む。遠巻きに見ていた人間達から悲鳴が上がった。
あらまぁ、手荒だこと。でも、こんなの痛くも痒くもないわ。

「汚い手で触らないでもらえるかしら?」
「なっ………いっ!!」

私は顎に触れている男の指を掴み、グキッと曲げた。
恐らく「痛い」と言いかけた男の声は「いっ」で止まってしまった。
情けないわね。指の骨が一本折れたくらいでそんなに痛がるなんて。

「それじゃ、御機嫌よう」

あらぬ方向に曲がった指を押さえながら「痛い痛い」と悲鳴を上げている男にニッコリ笑って手を振って、私がその場を去ろうとしたときだった。

「このアマァ!調子に乗りやがって!」

男の仲間だろう。どこから持ってきたのか分からないけれど、棍棒を振り上げて私を殴ろうとしている。
はぁ…、弱い犬は群れるのね。
でも、私を殴ろうったって無駄よ。人間の動きなんて簡単に見切れるんだから。
けれど、その攻撃を避けようとしたとき、私の前に突然黒い影が現れた。

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