「ほら!やっぱりそうだよっ!はじめ君と総司君だっ!」
「あーあー、やっぱり斎藤が何かぎゃーぎゃ言ってら」
「うっわ、総司の奴!ダッシュボードに足掛けてるぜ、はじめ君の車なのに態度デカッ!!」
「斎藤も大変だよなあ…」
「毎度の遅刻も、総司の奴が十中八九原因だろうが…、」

丁度、入れ替わりで出て行った目の前の駐車スペースに華麗な切り返しで車を納めたのははじめ君。以前運転には自信がある。と言っていただけあって、一発で止めていた辺り流石だと思う。そして、その助手席には、耳を塞いでニコニコ笑っている総司君。
彼らも同じく大学の先輩。二人は同じ会社に就職していた。だから今でもとっても仲良し…、

「あ、なまえちゃん!ごめん待った?」
「総司っ!まずは土方さん達に謝罪をしないかっ!!!すみません土方さん。遅くなりました」
「あ、いや。ご苦労だったな。斎藤…」
「うっるさいなーはじめ君。さっきからずっと怒鳴ってばっかじゃない。折角皆揃っての飲み会なのにさあ、ねえなまえちゃん?」
「え、あ、」
「あんたの所為だろう!幾度待てども待ち合わせに来ないっ!電話は出ないっ!結局俺が家まで迎えに行ったのではないかっ!!あんたが謝れっ!」
「はいはい、すみませんでしたー」

両手を上げて手首をひらひらと遊ばせながら悪びれた様子がない総司君は、やっぱり相変わらずで、それに一々目くじらを立ててるはじめ君を見て、会社でもこうなんだろうなーなんて思わず苦笑いをしてしまった。周りが呆れモードで「やっぱり何処まで行っても総司は総司だよ」と肩を落とす一方、土方さんに頭を下げていたはじめ君が、わたしに向き合い「待ったか」とふんわり笑った。

「ううん、わたしも今来たところだよ!はじめ君お疲れさまっ!見て!この間買ったマフラーしてきたの!」
「そうか、よく似合っている、」
「え!?何!?はじめ君、普段なまえと遊んでんのか!?」
「何が悪い。平助」
「俺も遊んでんぞ、時間が合えばだけどなー?」
「そうよ平ちゃんだってこの間会ったじゃん」
「え!うそなまえちゃん!普段遊んでるのって僕だけじゃないの!?」
「え?うん。皆と遊んでるよ。だってお誘いしてくれるし!」

わたしのその発言で、シーンと静まり返る空気。何?わたし何か可笑しなこと言ったかなあ。取り合えずキョロキョロと皆の顔を見上げて、首を傾げると。黒い笑みが並んでた。

「そうか、そうか。皆が皆そう言うつもりかよ…」
「俺だって忙しい中、何とか時間調節してんだぜ。渡してたまるかよ」
「へえ、言うじゃない左之さん…」
「俺とて、引くつもりなど無いと前々から言っていただろう…」
「オ、オレだって、頑張ってる…つもり、」
「ちっ、」

さっきまで寒かったのに、何故か熱い位に上がった温度に「どうしたの?」とマフラーを解くと、一瞬にしてわたしの背後に陣取った皆。え?え?訳が分からなくて慌てていると、腕が六本の手の平が背中にぽんと当たる。そのまま押されて居酒屋のスロープを登っていく。その間、ずっと背後でバチバチと火花が散る音が聞こえた気がした。

「さて、誰が勝つかなあ。楽しみ」

総司君が言った一言に、「ああ、」と言う返事が五つ。
まあ!何がともあれ!久し振りの七人で集れたんだから、楽しもう!

「皆、大好きっっ!これからもいっぱい遊んでね!」




舞台は整った「宴を始めよう!」


(ぎゃははははははっっ!!!酒持ってこんかーい!)

(おい、誰だよ!なまえに焼酎飲ませた奴!)
(あ、僕、僕!面白いよねーたこみたいになってる)
(なまえちゃんは焼酎に関してはべラボーに弱いよなあ…)
(なあ土方さん、あれ…誰が送ってくんだ?)
(誰でもねえよ。タクシーで帰らせるに決まってんだろ、)
(…だよな、)
(…ですね、)




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