「それでもダメなら、俺が貰ってやるから安心しろ」
「え、ひ、土方せ、」
「女は18になったら嫁に行っても問題ねえ事くらい、お前だって知ってんだろうが。進学だろうが、就職だろうが、…嫁入りだって同じ道には変わりねえ…。そうだろ、なまえ」
「っっっ!!??」

ふう、と一度耳に掛けられた息と、その甘い声色によく分からない感覚が腰から頭に駆け上がっていった。
そして暫くして手は離れていったのに、直ぐにまぶたは開けられなかった。

「ほら、帰り支度しやがれ。しょうがねえから送ってってやるよ」
「な、な…なーーーーっっ!!??」
「五月蝿い。途中で放り投げるぞ」
「ひ、土方先生っ!!」

もう教室内は、薄暗いのに、
わたしの顔だけは、さっきまであった夕日の様に真っ赤になっていた。
でも、さっきまで肩に入っていたらしい力が抜け、頭の中にあった漠然とした不安は、何故か霧が晴れたようになくなっていた。

その代わりに新しく芽生えたモノがあった。再び前方にある机に戻っていく背中を見ながら、わたしは思う。


ちょっと、
ちょっとだけ、

それでもいいじゃない。なんて思ってしまった。

でも…先生。
わたしは…






意地でも合格してやる!


(土方先生、さっきの、って)
(お前…、俺が学校1忙しい教師だってわかってねえだろう)
(えっと、つまり…?)
(ちっ、じゃあ明日からはお前置いてさっさと帰ってやるよ)
(っ、)





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bkm

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