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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「えっ、ちょっ沖田さんっ!?」
「いいから、ちょっと黙ってOLさんちゃん」

突然の事に驚いた。どうやら沖田さんがわたしの肩に腕を回しまるで抱き寄せるかの様に身体を寄せたのだ。彼女の前で。
な、何考えてるの!?この人!!!!目の前で固まっているのは斎藤さんだけじゃない。彼女と言う存在が目の前に居ながらのこの行動、そりゃ俯きもするよ。わたしだったら、きっとその場で頭真っ白で何も言えなくなっちゃう。これは、余りにも酷い。

なまえさんだって、こんなの見せられたら…。


「…総司さん、」
「なあに?」

いつも通りの声音で、ニコニコしながらなまえさんの呼ぶ声に返事をした沖田さんは、わたしを離そうとはしない。
斎藤さんに助けを求めたくても、彼も何だか気まずそうに目を逸らしているしここはわたしがどうにかしなきゃ。と、目の前で俯き震えている彼女を見て口を開いた。

「沖田さん!これは流石に酷、」
「OLさんさん美人過ぎ禿げる!!!もっと!もっとくださいっ!写真撮っていいですかっ!?ツーショット以外は認めませんっっ!!!絡みと目線くださいっ!」

「「はぁっ!!!??」」

凄い速さで、何処からとも無く携帯(あ、ガラケーだ)を取り出したなまえさんは、傷ついているのかと思いきや、頬を真っ赤に染めて満面の笑みを浮かべている。
…何故か涙を流しながら。

因みに、先ほど揃った声はわたしと…やっと我に返ってきた斎藤さんが発したもの。バシャーッ、バシャーッと絶えず聞こえてくるシャッター音と、わたしの顔の前でピースを作る沖田さんと、目の前で恍惚の表情を作りながらも号泣しているなまえさんのこのやり取りで、その時辺りは騒然としていた。

「お、沖田さん、彼女…変わってますね、」
「だから言ったじゃない。残念な子なんだって」
「…以前総司はそれを誉め言葉だと言っていたが、俺にはあの娘が不憫でならぬ」
「だからはじめ君はオヤジ臭い発言何とかしなよ」

おえ、おえと嗚咽付きでシャッターを切っていた彼女を見て、いつもよりずっと優しげで満足そうな笑顔を見せた沖田さんは、するりとわたしから腕を離して、ゆっくりなまえさんの方へと歩いて行った。

「もういいよ。泣いてる君が見れたからね」
「うえ、っひっ、ぞうじ、ざ…っ」
「馬鹿だなぁ、そんな無理しなくても…嫌なら嫌って言えばいいじゃない。何処まで君は残念なの?」
「だってぇええええっ!」

「え、」
「は、」

もうさっきからわたしと斎藤さん「え?」か「は?」しか言ってない。

今まで泣きながらしていた笑みをやめ、凄く悲しそうな表情で今度はわたし達が見て解る様な泣き顔のままこう続けるなまえさん。

「総司さんっ、OLさんさんの事嬉しそうに一杯話すし、今日だって呼び出されたのは別れを告げられるのかと思ってっ!でも総司さんの幸せは私の幸せだと思ってっ!」
「……ふうん、なまえはそれでいいの?」
「へ?」
「僕と別れて、生きていけるの?」
「ぐぅっ、」

なんだこれは。
いつの間にか修羅場になって、いつの間にか仲直りムードになって、いつの間にか巻き込まれていたらしいわたし達は、いつの間にか蚊帳の外に放り出されていた。

「僕は、なまえの泣いてる顔が一番好きだって前に言ったよね?」
「はい、」
「それを見られて僕は幸せなのに、なまえは僕と別れたいの。へえ」
「違いますっ違いますっ!私、」

沖田さんのスーツに遠慮がちにしがみ付いて、ぶんぶんと首を横に振っているなまえさんは、さっき見た太陽みたいな笑顔をへにゃりと作って「総司さん無しじゃもう生きていけませんっ!!」と、やっぱり元気な声でそう言った。



「何だか…こういうのがお似合いって言うんですかね、斎藤さん」
「……俺には微塵も解らぬ世界だ」
「ですよね」

目の前でいつもは見られないだろう満足気…いや、幸せそうな沖田さんの笑顔を見ながらわたしと斎藤さんは静かにその場から歩き出した。

「やっぱりアルティメットマゾってそこら中に居るんだなぁ、」
「…なんだそれは、」
「こっちの話です、」
「そうか。……何だか今日は冷えるな」
「冷えるし、どっと疲れました…」






色々な趣向のヒトがいてもいいじゃない


(さ、邪魔者も居なくなったしご飯でも行こうか。なまえ)
(あ、あれ?私OLさんさんとお友達になりたかったのですが、居ません!)
(ああ、じゃあ今度一緒に飲む機会作ってあげるよ)
(わああああありがとうございますっ!総司さん好きっ!滾るっ!)
(はじめ君は眼中に無しか。いい子だね)
(???)






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bkm

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