「それでさ、沖田君にね、彼女居るんですかって聞いたら、居るわけないじゃないって!」
「嬉しいぃいっ!じゃあ望み薄じゃないって事っ!?」
「よかったじゃん、あんたずっと沖田君の事好きだったもんね」
「うんっ、どうしよう。すごい嬉しいっ」
「昨日もゴミ捨て手伝ってくれたんでしょ?脈アリかもよっ!」
「きゃー!」

あの日、夢の中にはやっぱり総司は出てこなくて、逆にあろう事か学校で話しかけて「約束を守らない子は嫌いだよ」なんて言われてフラれる夢を見た。
朝からゲンナリして学校に行くと、抜き打ちテストはあるわ、出席番号で難しい問題に当てられて答えられないわ、土方先生の授業で寝ちゃって怒られ挙句の果てには放課後に資料室の掃除を言い渡されるわでついていない。

昼休みの現在だってやっと眠い授業から開放されたと思ったらコレだ。
総司とは別のクラスのわたしは、教室内で友達とお弁当を広げていた。すると別のグループの女の子の会話が耳にストンと入ってきて、その内容に動いていた箸を止めていた。

「どうしよう、私、もう好きって言っちゃおうかな、」
「良く二人で話してるじゃん!いけるってっ!」

総司は良くも悪くもああいう性格だ。
好意には好意で返し、悪意には悪意で返す。後者に至っては倍返しで。そんな事はずっと前から知っていたし、きっとわたしの知らない所で恋人とか作ってるんだろうなって思ってた時期もあったくらいだ。彼曰く不機嫌な時は人の居ない所でじっとしているんだって。機嫌のいい時だけ表に出てきて、人に甘えてまるでその様は気紛れ猫みたい。

今だって後ろの子が話す内容に「いいなぁ」なんて思ってるわたしは、一体彼の何なんだろう。恋人の筈なのに、そう思え無い。

わたしは、ゴミ捨てを手伝って貰うどころか、話しかけても貰えない。
前に放課後、総司の教室の前を通ったらクラスの可愛い子と仲良さ気に話している所も目撃してる。夕日差し込む教室でその絵は凄く様になっていて、自分をあの女の子に差し替えても、全然しっくりこなかったり。

想いが通じた筈なのにこんなにも辛いって凄いな。
幼馴染の関係では紡げない事が紡げるようになる、まさに夢の様なモノなのに、その反面学校生活で襲い来る不安は以前より大きくなった。

「なまえ?どうしたの?」と心配する友達の声に「なんでもないよ」と返すので精一杯なわたしは、食欲が無くなった身体をそのままに笑顔を作りお弁当箱に蓋をした。

「今日、放課後…私、告白する」

小さな声で聞こえたその言葉に、心臓が一度音を立てて軋んだ。








前頁 次頁

bkm

戻る

戻る