「分からない」

自分が声を発したことに自分で驚いた。
でもそれはささいなことで、またすぐ地面の水溜まりに意識を戻す。

2日目のクロックタウンには雨が降る。
今まで旅をしてきた身なので濡れることは気にしていない。
髪や服が張りついて鬱陶しいとは思う。
だからと言って傘をもつことなんてしないし、これからもきっとそうだ。

足下の水溜まりを再度覗きこむ。
それは絶え間なく波紋が浮かび落ち着きがないが、わずかにリンクや背景を映している。


わからない。


頭の中でもう一度つぶやけば、ふいに雨が止んだ。
その正体はわかっているので後ろは振り向かない。

「何をしているの」

それはたずねるというより咎めるような声音だ。
なまえは心配しているのだろう。

「リン「分からないんだ」
「…なにが?」

後ろを向いているためなまえの表情は分からないが、きっと眉を寄せていることだろう。

「分からない。なにが分からないのかも分からないんだ」

(強いて言うならば、すべてが。)
その言葉だけは飲み下した。


「それなら」


なまえは俺の肩に持っていたらしいタオルをかける。

「なにが分からないのか、見つけなきゃね」

なんだかなまえが嬉しがっているような気がする。
なまえは俺の横に立つと、その手を差し出した。

「ほら、行こう」

ちらりと水溜まりを見れば、なまえの傘の青で青空が広がっていた。
なんだかそれに無性に満足してなまえの手をとった。










泣かぬ空











(泣けばいいのに、意地っ張りなひと)




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marieさまリクエストありがとうございました!
しかし私がシリアスを書くと意味分からないことに…!←
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