「あれ、久しぶりじゃないか!」

なまえは片手を上げて応え、彼女に近づく。
健康そうな褐色の肌と、燃えるような赤い髪は太陽に照らされていた。

「ここへ来たってことはとうとう見つかったのかい?」
「残念ながら、まだ探してる最中だよ」

苦笑すると、彼女は自分のことのように悲しそうな顔を見せた。
彼女達は見かけによらず女らしい。っていうのは失礼だけどね。

「こっちはどう?」
「ナボール様がいなくてもなんとかやっていけてるさ。でも…やっぱり考えちまうもんだね」
「?」
「人1人がいなくなるのって、世界にとってはそんなに重要なことじゃないんだって」

なまえははっとしたように目を瞠る。
彼女は慌てて取り繕った。

「もちろんアンタがアイツを探してるのがムダとか言ってるわけじゃないよ?」
「…うん」

でも彼女の言ってることは確かなのだ。
現に彼が居なくとも私はこうして生きているのだから。

私は目を瞑って一瞬の間、逡巡する。
確かに、そろそろ潮時なのかもしれない。
もうハイリアを回れるところは回った。それでも姿どころか髪一筋の影さえ掴むことができなかったのだ。

「…ありがとう。話を聞けてよかったよ」
「えっ、あ、ちょっとなまえ!」

彼女の声を振り切って、私はゲルドの谷を後にした。




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