「なんで」
「ん?」
「なんで、剣をとろうと思ったの」
「んー」
「…………」
「最初はさ、森に住む皆が危ないならて思ったけど…」
「けど?」
「結局ここまできたのは成り行きかな」
「…………」
「まあ、剣が使えて損したことないし!」
「剣が使えたせいで、勇者とか言われて色んなことに巻き込まれたんじゃないの」
「うーん…。でも何でか巻き込まれた感じがあんまりしないんだよな…」
「…このお人好しめ」
「ははっ、人のこと言えないだろ。それに」
「?」
「巻き込まれなきゃ、なまえにも出逢えなかったしな!」
「……………」
広い、大理石の空間は私に冷気を突き刺す。 冷気だけではない。 耳が痛くなるほどの静寂が、無償に私を駆り立てる。
(ねえ、)
カツン、
踏み出したブーツの音が静寂を引き裂いてくれたが、その衝動はおさまらなかった。
(あなたは、私に出逢えて幸せでしたか)
その答えを唯一知っている彼は、もうどこにもいないなどと思いたくはなかった。
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