コツコツとブーツの踵が石畳を踏む。 城門の橋を渡れば、そこにはハイラル平原が広がっている。 なまえは町の喧騒を背中に受けながら、土の上に一歩踏み出した。
ここからは目の前にロンロン牧場、左にはデスマウンテン、右奥にはハイリヤ湖とゲルド砂漠がある。 しかし最初の目的地は決まっているのでなまえは迷わず足を進めた。
ザクザクと草木の生い茂った森をひたすら歩く。 魔物の気配が絶えないこの森は"迷いの森"であり、彼の故郷であるコキリの森もその中に存在している。
「……………」
わずかな木漏れ日の先に咲く花はどこか生命力溢れて見える。 木々も、一度は枯れかけていたが青々とした葉と枝を伸ばしている。
良い意味で変わった故郷を彼にも見せてあげたい。
なまえは再び足を動かすと、目的の場所にたどり着いた。 彼に初めて出会った森の聖域だ。
森の聖域。 切り株に座り、妖精があたりを飛び回っているのを眺める。 そういえば森の賢者は彼の幼馴染みのような存在なのだと彼に聞いた。
「……元気に、」
言いかけて首を振る。 元気にしているか、なんて答える相手もいないというのに。
「…………」
立ち上がって空を仰ぐ。
「また来るよ。今度は、彼も連れて」
そう言ってなまえは森の聖域に背を向け次の地へと歩き出す。 あたりには色とりどりな妖精たちが舞っていた。
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