ゼルダは開いた窓から青く続く空を見つめる。
正確には、この世界からいなくなってしまった二人を思い浮かべているのだ。
本当は彼女から旅の話を聞いた時止めようと思っていた。
彼がもうこの世界には存在しないであろう事を何となく気付いていたから。

7年間眠らされた彼を元の時代に返した際、本来この世界に存在するはずの彼は帰って来るのだろうと予想していた。
しかしそれは消滅という最悪の事態を引き起こしてしまった。
なぜ彼はこの時代にいないのかゼルダは考えたが、いくら考えたところで正解が分かるはずもなく、ただ明白なのは彼の消失は自分のせいだということだけだ。

「………」

ゼルダはゆっくりと目を閉じる。
彼女を、所謂時空の狭間とでもいわれる空間に飛ばしたのはひとつの賭けだが、彼に会うことはできただろうか。
彼女はゼルダを責めなかった。
ハイリアが暗闇に覆われたのも、彼がいなくなったのも自分のせいだと言っても「仕方ないよ」と返すのだ。

彼女も彼も優しすぎる。

ふと一羽の鳥が窓の縁にとまる。
顔を綻ばせたのもつかの間、後からやってきたもう一羽に誘われるように空へと帰って行った。

「 」

ぽつりと呟くその名前に当然返事はなく、喉の奥から溢れ出そうになるそれを押し込めてただ二人のしあわせを想う。

城下町の喧騒だけが、ゼルダの心を落ち着かせた。




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