「はああああ」
もはやそれはため息というよりも声に近い。
しかし毎日毎日あれではそんな大げさなため息もつきたくなるもので。
「ふふ、」
「笑い事じゃないんだって、ゼルダ」
ゼルダは上品に笑うと、でもと口を開く。
「なまえ、なんだか楽しそう」
「……ええ?」
どこをどう聞いたら今までの苦労話が楽しそうに聞こえるのか。
抗議の声をあげるが、ゼルダは気にしていないようにティーカップを持ち上げる。
「だってなまえったら嬉しそうに話すんだもの」
「…頭でも打ったか?」
今のをゼルダの家臣に聞かれたら顔を真っ赤にして怒られそうだ。
まあ部屋には二人だけなのでそんな心配はない。
「失礼ね」
「失礼なのはどっちだよ。さっきの俺のため息聞いてたか?」
「でも苦労ばかりな今が嫌じゃない」
顔を上げると、ゼルダがいたずらが成功したとでもいうように笑っている。
「って、顔に書いてあるわよ?」
「…………」
そしてそれには言い返せずに、俺は押し黙るしかなかった。
こういう時、幼なじみっていうのは本当に厄介なものだ。
確かに、確かに嫌なわけじゃないが。
そういう問題じゃないんですが!
(なまえー!!)(あら)(またかよ…)