「うーん……」
今日も今日とて書類とにらめっこしていると、扉がノックされる。
入るのを許可すると入ってきたのはセバスチャンだった。
「失礼いたします」
「おー、どした?」
「リンク様がいらっしゃってますが…」
「………」
あいつは暇なのか?
昨日もその前もうちに来てるが勇者の仕事はどうした…!
(なんか頭痛くなってきた…)
「仕方ねえな…行くか」
「こちらです」
ため息をついて机から立ち上がり、セバスチャンの開けてくれている扉に向かった。
「なまえー!!」
「はいはい落ち着け!」
飛び付こうとしたリンクを顔面を掴むことで止める。
「つかお前ウチに毎日のように来てるけど暇なわけ?」
「酷いな人をニートみたいに」
「実際近いもんだろ」
リンクは心外だとでも言いたげに顔をしかめた。
「お兄さま、リンクさまに失礼ですよ」
「いいんだよなまえ子」
リンクの後ろ、部屋のソファーに座ってこっちを伺っているのは俺の妹。
なまえ子は母親と同じで体が弱く、よく体調を崩しては寝込んでいる。
今日は調子がいいみたいで安心した。
「でも…リンクさまはお兄さまの恋人でいらっしゃるのでしょ?」
「断じてない絶対ないいらっしゃるわけがない」
そう、憧れの勇者さまからの刷り込みなのかなんなのか。
なまえ子はリンクのことを俺の恋人として接する。
そんなことあるわけないと何度否定しても、その考えは直らないらしい。
「ええー、酷いな傷付くよ」
「そういうことはもっと心を込めて言えるようになってから言え」
そんな気が抜けたふうに言われても全然心を打たない。
「あとどさくさに紛れて腰を掴むな離れろ!」
「恋人だからいいでしょ?」
「だ れ が !」
なまえ子はにこにこと此方を見ている。
「やはり恋仲でいらっしゃるのですね!」
妹よ、勇者より兄の話を聞いてくれ!
意志疎通が出来てません!
(お似合いですね!)(そうだろー?)(帰れ)