「なまえ〜」
「…………」
もはや日常的と化している、このスキンシップという名のセクハラ。
こうして抱き着いてくるだけならまだしも、ひどい時なんか尻は撫でるわ服に手を入れるわでほとほと困っている。
というのを今日は口にしてみることにした。
「リンク」
「なに?」
俺に引っ付いてご機嫌なのか、言葉がやけにやわらかい。
「そんなに楽しい?この体勢」
「うん、すごく」
ぎゅう、後ろから回された腕に力が入る。
俺としては目の前の机に置かれた紅茶すら飲めなくてなんとも言えない心境なのだが。
「つーか抱き着いてくるのはともかく、服に手入れたり…ぎゃあ!言ったそばからやるんじゃねえよアホ!!」
「えー」
「えー、じゃねえ…!」
リンクは渋々手を引っ込めた。
「だいたいなあ!こういうのだって好き合ったもん同士がやることだろ!」
「俺はなまえが好きだよ?」
「そういうのも好きなやつに言ってやれよ…!」
ぴたり、リンクの動作が止まったのに俺は気付かなかった。
「だか、らっ!?」
ぐるっと勢いよく視界が回り、状況を呑み込めたときにはリンクに押し倒されていた。
「ねえ、」
先程までの穏やかな気配はどこへ行ったのか、声音は剣呑さを孕んでいる。
「冗談だと思ってる?」
獣のような目に見つめられて目を反らすことはできず、この状況で頷いたり笑いとばしたりできるほど俺は図太くはない。
生唾を呑み込む。
「…………」
「…………」
「……………はああ…ほんとに鈍感だよね、なまえ」
リンクは呆れた顔でに項垂れる。
そのまま覆い被さるように抱き着いてきた。
「俺の心臓の音、分かるだろ?」
言われて意識すると、リンクの心臓が早鐘を打っているのが伝わった。
「分かった?俺が本気なの」
なんと言っていいか言葉につまり、ゆっくり頷いた。
「次そんなこと言ったら
食べちゃうから」
リンクの言葉に首が取れるんじゃないかってくらい首を縦に振った。
食べちゃうぞが冗談に聞こえません
(だってあの目は本気だった…!)