「……………」
いらいらいらいらいらいら。
おそらく俺は、ここ最近で一番苛ついていると思う。
最後にリンクの姿を見てから何日経っただろうか。
珍しくゼルダに長期の頼みをされたらしく、かれこれ10日ほど姿を見ていない。
別にそれ事態はまったく問題ないのだが、よりにもよってあの変態勇者は俺に一言も何も言わずに行きやがった。
毎日のように会っている人がいきなり来なくなれば誰だって心配するだろうが!
目の前の書類はまったく進む気配がない。
勢いよく背もたれにもたれかかると、ペンが手から逃げて転がった。
腕で顔を覆って息をつく。
「………リンク、」
ああ情けない。
こんなにむしょうに会いたいと思うなんて。
乾いた笑いがこぼれた瞬間、開けっ放しの窓から風がふいてきた。
「呼んだ?なまえ」
突然聞こえたその声に勢いよく体を起こすと、横からはえてきた腕に抱きすくめられた。
「ただいま」
「お前…!」
「心配した?」
「はあ?!」
あれだけ心配させといてなんだそれは!
「したに決まってるだろ!何にも言わずに行きやがって…!」
リンクはぎゅうぎゅうと抱きつきながら、「ごめん」と嬉しそうに笑った。
「でもそれって、なまえがそれだけ俺を好きだってことだよね」
「…………」
しまった。
つい言葉に詰まってしまったが、これでは好きだと言っているようなものだ。
リンクが顔を覗き込んでくる。
「ね、俺のこと好き?」
こんなことを言うのは失礼だと思うが、第一印象から最悪だった人間を誰が好きになるかと思っていた。
しかしこいつの変態的なところが多々あるアプローチは俺の心を掴むことに成功していたらしい。
(ちくしょう)
なんだか罠にはまった気がしなくもないが、
「…好きだよ、悪いか」
このイライラがおさまったことに免じて、目をつむろう。
予定と違うけど案外しあわせです
(………おい)(え?)(体をまさぐる手をやめろ!この変態勇者!)