あなたがもらう傷を私で癒せることは出来ないのですか
最悪だ。
「はぁ、っはぁ」
何とか巨大樹の森まで辿り着いたものの、巨人の襲撃を受け部隊は大打撃を受け、兵はバラバラに散ってしまった。
この場には上司であるエルヴィンさん、リヴァイさん、ハンジさんの三人にエレンくんがいる。
周りは巨人に囲まれた状態。
「っクソ・・・どんどん湧いてきやがる」
「さすがにキツいね・・・・どうする?エルヴィン」
エルヴィンさんはひとつ重たい息をつくと、「帰還する」とはっきりした声で言った。
ただしそうは言ってもこの数を相手にしていては馬に乗ることもできない。
「オレがやります!巨人になってこいつらを・・・!」
「だめ」
誰よりも早く否定の言葉を告げればエレンくんは眉を顰めてこちらを振り返る。
「その力は容易に扱えるものじゃない。もしも自我がなかったらどうするの?あなたの命だって・・・」
「あんたが心配してるのは俺じゃないだろ!!」
エレンくんの言葉はその場を凍らせた。
私が心配しているのは『エレンくん』ではなく『エレン』なんだろう、なんて言われて当然だ。
混乱していたとはいえ、私が彼に酷いことを言ってしまったのだから。
「・・・この森は東西に延びているけど、西側は木が低く捕まりやすい。やるなら東側である程度倒してから頃合いを見て帰還すべきだと思います」
「ああ」
「エルヴィンさんとエレンくんはここに残り、他三人で巨人の討伐にあたるのがいいと思います。巨人が粗方片付いたら馬のところに向かってください」
「待――!」
「エレン。その通りにしよう」
「団長!?」
納得がいかないと喚くエレンを睨みつける。
「巨人になって生きられる根拠は?現状でもし巨人化に失敗でもしたら私たちまで殺される可能性だってある。・・・感情ばかりが先走って、失ってからじゃ遅いんだよ・・・!」
これ以上ここで言い争っていても仕方がない。
起動装置をぐっと握りなおし、樹から飛んだ。