取りこぼした想いを拾っていたかった、



 
「反対です」

思わず口から零れてしまった言葉は、部屋にいる人たちの視線を集めるのに十分すぎるものだった。

「私も反対だな。今の混乱してるなまえを連れて行っても戦力に数えられないと思う」

思わぬところから出た加勢に少し安堵して次は、と上司に向けて視線を向ける。

「別に、本人が行きてぇって言ってんだから行かせりゃいいじゃねーか」

それに、と兵長が視線を向けた先に倣って顔を向ける。

「お前の中ではもう決定なんだろ?」
「ああ」

団長は迷いもなく頷いた。

「・・・でも何で急にそんなこと言い出したのさ?」

ハンジさんの疑問はもっともなものだ。
ついこの間まで部屋に籠って泣き腫らしていたなまえさんがいきなり次の壁外遠征に同行すると言い出すなんて、普通では考えられない。
でも団長の口ぶりからするとそれは事実のようで、目の前の上司たちが無理矢理彼女を壁外調査に引っ張って行こうとしているわけでもないようだ。

「理由については詳しく聞いていない。だが彼女が力を持っているのは確かだ。幾分か兵の生存率も上がるだろう」
「・・・死ぬつもりだとか」
「それもない。なんなら本人に確認して来ればいいだろう」

団長の言葉にハンジさんは苦虫を噛んだように口を噤んだ。
・・・なまえさんと団長の間で何かあったのかもしれない。

「今まで通りリヴァイの班に入れる。頼んだぞ」
「ああ」

本当に、あの人は何がしたいんだろう。
泣いて泣いて、その末に行きついた答えを推し量るなんてことは当然できない。
責任感のある人だから、兵としての役目を果たそうとしているだけなのか?
それともさっきハンジさんが言ったように・・・死ぬことを考えているのか。

(どちらにしろ、死なせたくない)

あの泣き顔を見てもなお褪せない想いは、ただそれだけを示していた。





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