その目とこの目で見える景色はどうやら違うらしいね



 
「・・・・・」

長い時間座っていた長椅子から立ち上がって意味もなくふらふらと歩きまわる。
そうしたところで考えなど纏まるわけでもないが、何もしないよりマシかなと思った。

「私は仲良くしたい」そう言ってくれるのは人として嬉しい。
でも同じ姿の彼女たちがどうしても重なり、どうにも受け入れづらい。

ミカサちゃんとの会話でまた心と思考が揺れ動く中、遠くに見知った背中を見付ける。
リヴァイさんとハンジさんだ。
距離があるため会話の内容は聞こえないが、書類を手にしていることから次の壁外遠征のことだと推測する。

(――――ああ)

あの世界で何度でも見た光景だ。
ああして話し合いをしていうと思ったらハンジが次第に巨人の話で盛り上がってしまい、兵長がそれに耐えきれなくなって足払いをかけて―――。


「―――――え」


目の前の兵長、いやリヴァイさんは騒ぐハンジさんに足払いをかけることなく呆れた様子でハンジさんを放置して去って行った。
残念そうに後を追いかけるハンジさんを呆然と見ながら、次に現れたのはミケさんとエルヴィンさん。
こちらは真面目な顔で何事か相談しており、考え事をするようにエルヴィンさんは顎を撫でる。
違う。
団長は考え事をするとき、親指と人差し指を擦り合わせるのが癖だ。

ヒュッと自分の息を呑む音がやけに鮮明に響く。
気付いてしまった。



目の前にいる"彼ら"は、私の知っている"彼ら"とはまったくの別人なんだ。



ハンジさん。
リヴァイさん。
エルヴィンさん。
ミケさん。
特別作戦班と調査兵団のみんな。
ミカサちゃん。
アルミンくんに新兵の子たち。

「エレン、くん・・・」

私は、とんでもない間違いをしていたのか。
先日の苛立った金色の瞳を思い出して、指先が冷えていく感覚がした。





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