傷をつけた約束をずっと胸に抱いた、君が好きだから。



 
「・・・話してくれるね?」

翌朝、幾分か落ち着いた頭で団・・・エルヴィンさんの執務室に呼び出された。
そこには上司の面々だけでなく、エレンくんやミカサちゃんにアルミンくんの姿まである。
ひとつ、目を閉じて記憶を整理させ、なるべく声が震えないように願って口を開く。










「なまえ!」

元気な声に振り向くと、ハンジが息を切らせてこちらに駆け寄って来た。

「どうしたの?そんなに嬉しそうにして」
「そりゃあもう!この間捕まえた巨人がさあ―――」

ハンジが話し出そうとしたその瞬間、その後ろから地を這うような低い声が言葉を途切らせた。

「オイクソメガネ・・・もう第一陣が出発する時間だろうが・・・」
「分隊長!急いでください!!」

そのままハンジはモブリットに引きずられて行った。
苦笑しながら眺めていると、兵長に尋ねられる。

「お前は第二陣のほうだったか」
「はい。兵長もですよね?」
「ああ。・・・あいつの御守りは任せたぞ」

御守り。
確かに少し直情的でああるが、その言葉が当てはまるほど子供でもないだろうに。

「あと少しでシガンシナ区に辿り着ける。気を抜くなよ」
「はい」

軽く敬礼をすると兵長は去って行った。
数々の悲劇や喜劇を乗り越え、やっとここまでやってきた。
あと少しで、マリアが奪還できる。
第二陣の出発に向けて用意を始めようかと考えたと同時に聞き覚えのあり過ぎる声が後ろからかけられた。

「あっ、なまえさん!」

まさに噂をすれば、というやつだ。
兵長に御守りの対象とされた少年は嬉しそうに顔を綻ばせている。

「もう出発の用意はした?」
「ほとんど終わりました。・・・それにしてもよかったです、また同じ班で」

などと言ってはいるが、これは兵長や団長の差し金なんだろうな・・・。
そんなことは露知らず、私の手をぎゅっと握ってきた。

「無事に―――」
「なまえー!!」

何かを言いかけて、後ろから叫ばれた声に驚いて慌てて手を離す。
そこには引きずられていったはずのハンジの姿があった。

「さっき部屋に行ったとき報告書置いてきちゃったみたいだから代わりにリヴァイに渡しといてー!」

言うだけ言って、ハンジは慌ただしく走って行ってしまった。
その姿に二人で苦笑し、今度は私からその手を握る。

「一緒に帰って来ようね、エレン」
「はい」

首から下げている、エレンから預かった鍵が音を立てて揺れた。





巨人はその数を減らし、もうすぐで人類は勝利できる。
そう、何も臆する事はない。


はずだった――――。





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