私が思い描くものは酷く幸せで、きっと脆いかもしれないね。
「わぁ・・・この辺りは活気があるんだね」
「ここはこの街で唯一の市場なんです」
軒を連ねる多くの出店にそれを眺める人々。
客を寄せる声は遠くにいても十分耳に入ってくる。
「なまえさん、逸れないように気を付けて下さいね」
「えっ、私そんなおっちょこちょいに見える・・・?」
そんな冗談を言ってみせたアルミンくんはくすくすと静かに笑った。
私服姿のアルミンくんとミカサちゃんが連れ出してくれたのは街で行われる市場だった。
朝、急に訪ねてきたときは驚いたけど、「団長と兵長に許可はもらってます」と言われればついて行くしかなかった。
エレンくんはリヴァイさんの監視の関係でこういう場には行けないらしい。
「エレンくんには何かお土産を買って行ってあげようかな」
その言葉に2人も賛成してくれて、まずは何を買っていくか悩むことになった。
「うーん・・・何にしよう?」
さっきから市場をうろうろしているのだが、目に入ってくるものはどれも目を引くものばかりで中々決められない。
(本・・・は読むイメージじゃないし、アクセサリーもする感じじゃないよね)
うんうん唸っているとアルミンくんが苦笑した。
「そんなに悩まなくていいと思いますよ」
「でも・・・」
「なまえさんがこうして悩んでくれたものなら、エレンは喜ぶと思います」
「そう、かな・・・」
でもここでずっと立ち往生するわけにもいかないし・・・。
すると突然目の前に何かが立ちはだかった。
「嬢ちゃん、果物好きかい?こいつはうちで採れた果物で作った菓子なんだけど、ひとつどうだい?」
それは近くの露店の店主のようで、指さすほうを見ると種類は少ないものの、美味しそうな菓子が並べられていた。
「へぇ・・・これって林檎ですか?」
「こっちは・・・」
「そいつはレモンだな!」
アルミンくんとミカサちゃんが興味を示している。
・・・そうだ!
「おじさん。それ、少し多めにください」
「おっ、嬢ちゃんそんなに買ってくれるのかい?」
店主が意気揚々と袋に詰めてくれるのを見ながら、エレンくんにあげるには多すぎる量に首を傾げる2人に笑みを向けた。
「2人共、今日は連れてきてもらったし・・・。そのお礼も兼ねて、みんなでお茶でもしよう?」
「あ、ありがとうございます!」
「なまえさん、ありがとうございます」
「許可をくれたエルヴィンさんとリヴァイさんにも、お裾分けしなきゃね」
最近よく気分を悪くしているから、それを心配して3人が悩んでくれたのを知っている。
周りに心配かけてばかりはいいこととは言えないけど、心配してくれる人がいるのは本当にありがたいことだな、なんて心の底から思うのだった。