うなづきかけた問いに背を向ける



 
エルヴィンさんに頼み込んだ翌日。
私は再びエルヴィンさんの執務室を訪れていた。

「今までは基本の話しかしてなかったんだけど、現状の目的なんかを話してなかったからね」
「リヴァイの班に配属された以上、知っておいてほしい」
「はい」

今、調査兵団はシガンシナ区にあるエレンくんの家が目的地なのだという。
そこには地下があり、エレンくんの父がそこに巨人の秘密を隠しているのだとか。

「その地下室の鍵はエレンが持ってて・・・・。なまえ?」
「はい・・・」
「顔色が悪いようだが大丈夫か?」

ズキズキとこめかみが痛む。
話が進むたびに痛みが強くなっていくこれはいったい何を示唆するんだろう。

「少し長くなっちゃったし、休憩しようか」
「でも、」
「そんな顔面蒼白で聞かれてもこっちが気になっちゃうし、ね?」

ハンジさんのその言葉に甘えて、少し外にでも出ることにしよう。






今日は穏やかな陽が降り注ぎ、つかの間の平和を噛み締めるにはうってつけの日だ。
この痛みがなければいい気分だったのに。
ため息をついて近くの木にもたれて座る。

(ちょっと治まってきた・・・)

そのまま治らないかなと目を閉じる。
すると土を踏む音がすぐ近くから聞こえてきた。

「なまえさん?」

聞き覚えのある声に目を開くと、こちらを覗き込んでいるエレンくんの視線とぶつかった。

「どうかしたんですか?」
「ううん、大丈夫だよ」

痛みもだいぶ引いてきたし、別に話すほどのことでもないと思ってそう返したのだが、エレンくんは勘違いをしてしまったようで。

「あの、訓練に身が入らない時くらいありますよ」
「え?」
「確かに兵長の言ってることは正しいと思います。でもいつでも好調ってわけでもないですし・・・」

どうやら昨日の訓練でリヴァイさんに注意されたことで落ち込んでいると思われたらしい。
たどたどしくも励まそうとしてくれてるエレンくんに笑みがこぼれる。

「ありがとうエレンくん。本当に大丈夫だよ」
「そう、ですか?」
「うん」

座り込んでいたのもそう思われた要因かな、と立ち上がって土を払う。
エレンくんに視線を戻すと、ふと首にかかっている紐が目に飛び込んできた。
その先は服の中に仕舞われているためその姿は見えないが、おそらくそれがさっきハンジさんから話があった地下室の鍵なんだろう。

「っう、!」

治まってきていたはずの頭痛が突然痛み出す。
急なことに膝が折れて倒れそうになり、咄嗟にエレンくんが支えてくれた。

「なまえさん!?大丈夫ですか!?」
「ご、めんね・・・」

ぐっと立ち上がり、エレンくんから手を離す。

記憶を取り戻すことが出来たらこの痛みも消えるのだろうか。
早く、この痛みから解放されたいと強く思った。





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