一年後の僕の姿を想像できるかい、
パシュッとアンカーとガスの射出する音が森に響く。
目の前の背中を追いかけていると、ふいにその人は太い木の枝に着地した。
自分も同じ様に足をつける。
「ふざけてんのか」
低い声に後ろでエレンくんが息を呑んだ。
しかし振り返ったリヴァイさんの視線は私に向けられている。
「全然身が入ってねぇ。そんなんで訓練してるつもりか」
リヴァイさんの言葉に俯く。
自覚はしていた。
あの恋人らしき人物が出てきた夢を見たあたりから、ほぼ毎日と言っていいほど何らかの夢を見ている。
それはどれも身に覚えのない風景で、あるときは誰かに向かって心臓を捧げていたり、あるときは巨人に向かって刃を振るっていたり。
「・・・・・」
またあるときは、件の人物と肩を寄り添わせていたり。
それらが気になってしまってここ最近はぼうっとしてしまうことが多かった。
「すみません」と小さくこぼす。
「別に謝る必要はねぇ。だが実際に戦闘になったとき、困るのはテメェ自身だ。死にたくなきゃ前を見ろ」
「・・・はい」
こんなことをしていては、自分が巨人に食われるだけ。
それでも気になってしまうのなら―――。
「お願いします」
私が話し出してからエルヴィンさんは一言も発さないでいた。
「無茶なお願いなのは重々承知です。もちろんこんな私事にみんなを巻き込むつもりはありません」
だから・・・。
「次の壁外調査で、私が森に向かう許可をください」
このまま記憶を無くしたまま生きることもできる。
でもどうしてか、あの夢に”思い出せ”と言われている気がするのだ。
「私一人で行きます。そこで死んでも私が命令無視をしただけのこと・・・」
少しの沈黙。
夕日の赤に染まった部屋でとうとうエルヴィンさんの口が動いた。
「単独行動の許可はできない」
「・・・・そう、ですよね」
集団で行動してる以上、そんなの当たり前だ。
「だがあの森を通過点とすることはできる」
「!」
可能かどうか検討してみよう。
その言葉に、私は深々と頭を下げた。