記憶もすべて取り戻さなくていいから、そのままでいてね



 
コツコツ、
昼下がりの頃、ドアがノックされる音でうとうとしていた意識が浮上してくる。
ベッドで上半身を起こし「はい」と返事を返すと、聞き覚えのある声が聞こえたので入室を促す。

「なまえさん、大丈夫ですか?」

静かに部屋に入ってきたのは、エレンくんとミカサちゃんにアルミンくん。
アルミンくんはエレンくんたちの幼馴染で、ミカサちゃんを通じて知り合ったのだ。

「もう平気だよ。ハンジさんが休めって言うから休んでるけど、もう全然動けるし」
「でも無理はダメですよ」
「うん。ありがとう」

本当のことを知らないミカサちゃんとアルミンくんには過労だと説明してある。
こうして心配して訪ねてきてくれるなんて、いい子たちだなぁ。






それから三人はしばらく談笑に付き合ってくれた。
日も暮れてきて、アルミンくんとミカサちゃんは退室しエレンくんと二人になる。

「なくしもの、何とか探せるといいんですけど・・・」
「仕方ないよ。そんな身を挺してまで探せないから」

眉尻を下げたエレンくんの頭を撫でる。

「・・・なまえさん、子ども扱いしてますよね?」
「えっ、そんなつもりは・・・!」

慌てて手を放す。
本当にそんなつもりはなかったのだが、なんだか自然と手が伸びてしまったのだ。
それに、

「人に触れてると安心すると思って」

心配してくれるのは嬉しいけれど、私の事なんかで悩む必要はない。
言えば、エレンくんはおもむろに手を伸ばし、

ぎゅ、

とさっきまで頭を撫でていた手を握ってきた。

「安心しますか?」
「え?」

そんなに強くない力で握られた手は、エレンくんの体温でじんわり熱を持ち始める。
その手にもう片方の手を添えると少し力が強まった。

「うん。あったかい」

そう返せばエレンくんは「よかったです」とぎこちない笑みをみせた。





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -