苦痛を飼い慣らして、それを糧に生きるがいい



 
「ごめんね、エレンくん」
「いえ・・・」

エルヴィンさんの執務室でエレンくんと膝を突き合わせて椅子に座る。
部屋には他にもリヴァイさんやハンジさん、それに部屋の主のエルヴィンさんがいる。
こんなことで記憶が戻るとは思えないけれど、昨日ハンジさんが言ったように何もしないよりはマシだろう。

「・・・・・」

じっとエレンくんの瞳を見つめる。








『―――さん―――で―か?』
『何――――って――』

誰かの背中。
自由の翼を背負ったそれは楽しげに上下している。

『・・・・・』

その人物は急にこちらに体を向けた。
そして私に何かを差し出している。


『これを――――』







「なまえさん!!」
「っ!!」

体を揺すられ、気が付くとエレンくんが心配そうに覗き込んでいた。
はぁっ、と荒い息を吐き、強張っている体の力を徐々に抜いていく。

「なまえ、大丈夫?」

ハンジさんの問いに小さく頷いて返す。

「痛っ!」

瞬間感じた鋭い痛みに手を開くと、どれほど強く握っていたのか、爪の跡が深くキズになっていた。

「うわっ、手当てしないと・・・」
「何か思い出せたのか」

心配そうなハンジさんとは対照的にリヴァイさんはいつもと変わらない口調で言った。

「・・・誰かから大切なものを貰いました」
「それで?」
「それを・・・」



”噎ぶような花の香り。”
”キン、と金属物が落ちる音が響く。”



「あの花畑でなくした・・・・」
「花畑?どこの?」
「多分、私が見つかった森の中です」
「あそこか・・・」

それを探したい。
でもあの森はウォール・マリア内にあり巨人たちを掻い潜って行かなければならないのだ。
一人でなんて到底辿り着けないし、だからと言って個人の都合で壁外調査のついでに行くとこもできない。
何、も―――。

視界が黒く染まる直前に見えたのは、驚いた様子のエレンくんだった。





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