銀色に輝くスプーンにうつる日々
「少し、いいですか」
疑問ではなく掛けられた声は少し固く、首を捻らせるには十分なものだった。
「どうかした?えっと、ミカサちゃん」
ミカサちゃん、で合ってるはずだ。
直接話すのはこれが初めてだが、とても出来のいい新兵だと聞いている。
黒曜の瞳は困惑したような、でも底に強い意志を持つそんな印象を受ける。
一瞬の沈黙の後、彼女は芯のある声をこぼす。
「エレンとはどういった関係ですか」
質問の内容に思わず動きが止まった。
どういう関係とは・・・つまり、そういうことなのだろうか。
「関係、は・・・同じこの兵団の仲間、だよ?」
それ以上でも以下でもない。
唯一付け加えるならば、彼は私が壁外で見つかったという事実を知っていることぐらいだ。
一版の兵には伏せられているのだが、エレンくんはリヴァイさんやハンジさんと行動することが多いためエルヴィンさんの考えで知ることになったようだ。
しかしミカサちゃんは私の返答に眉根を寄せる。
「なら、昨日のあれは何だったんですか」
「え?」
「昨日、厩の前でエレンと話をしていました」
それは事実だ。
頷いたことろではたと気づく。
もしかして、その後顔を引き寄せたところを見られていた・・・とか。
「あ、あれは何ともないの!その・・・エレンくんの瞳にゴミが入っちゃってそれを取っただけ」
「・・・本当ですか?」
「何ならエレンくんに確認してくれてもいいよ。本当に何もしてないから」
ミカサちゃんは僅かに視線を彷徨わせると、「すみません」と謝ってきた。
「エレンくんのこと、大切なのね」
「幼いころから一緒で・・・。私が、何に変えても守りたいものです」
「そっか」
エレンくんのこと大好きなんだね。
その言葉にミカサちゃんは目を細める。
「家族だから、守りたい。・・・エレンは、すぐに無茶をするから」
「確かに少し危なっかしいかも」
先日の壁外での出来事を思い出して少し笑ってしまう。
それから数時間、ミカサちゃんからエレンくんのことや小さいころの話に花を咲かせ、途中通りかかったエレンくんに楽しそうに何の話をしているのかと問われてミカサちゃんと「秘密」と笑いあった。