昔々。 まだこの世が混沌に包まれていたころ、三人の女神が降り立った。
力の女神ディン。 そのたくましき炎の腕をもって地を耕し、赤き大地を創った。 知恵の女神ネール。 その英知を大地に注ぎて世界に法を与えた。 勇気の女神フロル。 その豊かなる心により、法を守りすべての生命を産んだ。
三大神は使命を終え天へと帰るとき、黄金の聖三角トライフォースを残し、そこを聖地とした。
やがて水が産まれ、森が産まれ、妖精が産まれた後。 聖地に最初の人間が産まれた。 体に聖なる証を受けたその人間は神に愛された子、「神子」と呼ばれるようになった。 神子は聖なる力を持ち、生きとし生けるもの全ての安寧を願った。
しかしその力を狙う人間が現れた。 人々は争い、戦争を起こした。 神子は悲しみ、その力を三つの石に封じ、いずこへと消えたという。
「……………」
少女は古く分厚い本を閉じた。 白い石造り壁の、少し高いところにある窓を見上げる。
ここには音が、風がない。 その時カツ、カツ、と石畳を蹴る音がした。 続いて扉をノックする音。
「失礼します!」
そう言って入ってきたのは甲冑に身を包んだ兵士だった。
「神子モニカさま、ゼルダ姫さまがお呼びです!城までご同行願います!」 「…………わかりました」
モニカはひそかに眉を寄せ、椅子から立ち上がる。
そして兵士に続き、時の神殿をあとにした。
君を探す空
どこかで、誰かが泣いている気がした。
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