希望の闇
コツコツと石畳を打つ音が響く。
エレンを審議にかけるため、審議所まで連れて行くのが俺たちに課せられた役目だ。
薄暗い通路の先、その檻の中に数日前に見た少年が拘束されていた。
「ごめんねエレン、待たせてしまって。でもやっとここから出られそうなんだ」
「・・・!」
ハンジの言葉にエレンは驚きと喜びが入り混じったような表情を見せた。
しかし檻から出てすぐに後ろ手を拘束されて困惑したものへと変わる。
エレンを連れたって地下牢を出るとハンジが話し出す。
「私は調査兵団で分隊長をやってるハンジ・ゾエ。そっちの彼は・・・」
「あ・・・あの・・・」
「・・・彼も同じ分隊長のミケ・ザカリアス。そうやって初対面の人の匂いを嗅いでは鼻で笑うクセがある」
実際に匂いを嗅がれ、言葉通り鼻で笑われたエレンは何とも言えない・・・というより引いているように見える。
「多分深い意味はないと思うね。まあこんなのでも分隊長を務めるほどの実力者ではあるんだ・・・」
本当に、実力はあるのにそういう癖なんかのせいで調査兵団は変人の集まりとか言われてんだぞ。
・・・他人の事は言えないかもしれないが。
「もうひとりはギルバート・ハイン。彼も同じ分隊長なんだ。調査兵団の中でも相当な実力の持ち主だよ」
エレンの視線を受けて頷いて返す。
と、そんなことを話しているうちに大きな扉が見えてきた。
「あ!ごめん、無駄話しすぎた。もう着いちゃったけど・・・大丈夫!むしろ説明なんか無い方がいい」
「え?」
「・・・お前が思ってることを正直に言えばいい」
「うん。勝手だけど私達は・・・君を盲信するしかないんだ」
驚くエレンに続いて中に入り、扉の前で待機する。
今から始まるのは、エレンが人にとって有害か否か。
生かすか殺すかの審議だ。