口先だけで笑う
壁上固定砲の音が響く中、目の前の肉を削ぐ。
呻き声を上げる訳でもなく、その小さな巨体は地面に伏した。
屋根の上から辺りを見回すがここから確認できる獲物はいないようだ。
「はー・・・」
俺たち調査兵団はトロスト区に残った巨人の掃討に駆り出されていた。
昨日助けたエレン・イェーガーという少年。
あの子供にはなぜか巨人に変身する能力を有しており、街にあった大岩を運んで壊された穴を塞ぐ作戦に成功したらしい。
本人はまだ意識が戻っていないらしいが、エルヴィンがしきりにエレンに会う許可を取りに憲兵団へと足を運んでいる。
リヴァイ自身はあまり興味がなさそうだった。
それにしても。
街に残された巨人は細かいのが多くて見つけるのも一苦労だ。
建物なんかの遮蔽物で取りこぼしが起こりそうである。
「もういねぇのか・・・?」
そう呟いた矢先、4メートル級と思しき巨人がこっちの方に歩いてくるのが見える。
「・・・・・・」
ぐっと操作装置を握る力が篭る。
足を踏み出そうとした瞬間、
「オイ」
「って!」
頭に衝撃を受けた。
理不尽な痛みを抑えながら振り返ると、予想通りリヴァイがいつもの表情で立っていた。
「意味もなく殴んなって何度言えば・・・!」
「そんなことより、いい加減その癖を治せこの戦闘狂が」
リヴァイの言葉に喉まで出かかった言葉が引っ込む。
「・・・また?」
「ニヤニヤしやがって、気持ち悪ぃ」
どうやら俺は巨人との戦闘中に笑っている事があるらしい。
戦闘狂と言われるほど戦いが好きなわけではないし、いくら実力があると言ってもリヴァイほどではない。
しかも無意識だ。
治せと言われても意識的でないのに無理がある。
「好きで笑ってる訳じゃねえよ」
「そんなことは分かってる」
じゃあ言うなよ!反論する前にリヴァイはさっさと巨人に向かって行ってしまった。
その背中を見て、本日数回目のため息をついた。