耳鳴りと噴煙
「ギル!」
狙った獲物を仕留めて屋根に着地すると少し離れたところの屋根の上にいるリヴァイに呼ばれた。
リヴァイはこっちを向いておらず、その視線の先を辿ると右方に一体、さらに左方には二体の巨人が見える。
「俺は左を片付ける!」
「了解!」
「ギルバート分隊長!」
そう言って飛んで行ったリヴァイと入れ替わるようにぺトラが現れた。
「巨人はこっちでやるから、下で倒れてる兵士を頼む」
「はい!」
剣を握り直し、目標の巨人に向けて勢いよく屋根から飛んだ。
「血が・・・止まりません」
ぺトラが患部に押し当てた布の色が分からなくなるほどの血の量。
もはや虫の息なのは誰が見ても明らかだった。
「兵・・・長・・・・」
「・・・何だ?」
リヴァイが兵士の横に膝をつき、その傍に立つ。
兵士はゆるゆると力なく手を伸ばした。
「オ・・・オレは・・・人類の役に・・・立てた・・・でしょうか・・・。このまま・・・何の役にも・・・立てずに・・・死ぬのでしょうか・・・」
それを聞いたリヴァイがぐっとその血塗れの手を握る。
「お前は十分に活躍した。そして・・・これからもだ。お前の残した意志が俺に”力”を与える。約束しよう、俺は必ず!!巨人を絶滅させる!!」
リヴァイは力強く放つ。
しかし兵士はもう事切れており、俺が肩に触れると気が付いて手を離した。
「最後まで聞いたのか?こいつは・・・」
「えぇ・・・きっと聞こえてましたよ。だって・・・安心したように眠っている・・・」
「・・・・・ならいい」
そんな暗い空気を裂くように聞こえたのは馬の蹄が地を打つ音。
振り向けばエルヴィンがこちらに駆けてきていた。
「リヴァイ!ギルバート!退却だ」
「・・・!?」
「退却・・・?!」
戦場になっているこの地は壁からそう離れておらず、残った人員や物資を想像するにまだ先まで進めるはずだが・・・。
「まだ限界まで進んでねぇぞ?俺の部下は犬死にか?理由はあるよな?」
睨みつけるリヴァイとは対照的にエルヴィンは冷静な表情のまま返す。
「巨人が街を目指して一斉に北上し始めた」
「「「!!?」」」
「5年前と同じだ。街に何かが起きてる。壁が・・・破壊されたかもしれない」
その言葉に、エルヴィンの後ろをついて来ていた兵士に預けていた馬に飛び乗る。
先に走り出したリヴァイの後を追い駆け出した。