今夜呼吸することができない





呼び出した男はノックもせずに部屋に入って来て、何も言わずに部屋に備え付けられた椅子に腰を下ろした。
今更横暴だなんだと責めはしないが、苦笑いをするくらいは仕方ないと思って欲しい。

「早かったんだな」
「お前が早く来いっつたんだろうが」
「まさか本当にあの量の書類を早く終わらせるとは」

俺の言葉にリヴァイはギロリと睨みつけてくる。
それに肩を竦めて戸棚から用意してあったビンとコップを取り出す。
これは毎年この日にリヴァイと飲んでいる酒だ。
入手方法は割愛。
別に決まり事という訳ではなく、ただ恒例になってしまっただけ。
普段飲むヤツより辛いこいつは、決して酒に弱くない俺たちの喉をすぐに焼いてしまうほどの濃度を持つ。
つまり酔いが回りやすいのだ。





「さすがにもう無理・・・」

声がもう一度変わるんじゃないかってくらい熱い喉元を擦る。
ビンは丁度空になったらしく、振っても音がしなかった。
リヴァイは最後の一口を飲み干すとイスの背に深く凭れ掛かった。
さすがの兵士長様もほろ酔いなようで、体は僅かに赤いし目線がどこか頼りなさ気だ。

「寝るからベッド行けって」

返事も寄越さずリヴァイはベッドに向かって歩いて行く。
その間に後片付けをしようとビンに手を伸ばした。

「っお?」

しかしその手はビンに届く前にリヴァイに掴まれて止まった。
そのままズルズルとベッドに連行されて放り投げられる。
仮にも恋人に向かって何て扱いだなんてさして気にしてないことを心の中で責めていると、ギシリと木の軋む音と共にリヴァイが腰に跨ってきた。
どうやらそういう気分になったらしい。

「明日起きれんの?」
「大丈夫だろ」

何だかんだ言いつつもこの流れも毎年のことで、次の日にはやっぱり起きるのが少し遅くなってしまうのだが。
まあ酔った頭でごちゃごちゃ考えるのも億劫だし、とリヴァイの頭を引いて口を寄せる。
ああ、酒臭い。
長いキスの合間にする呼吸も酔いを深くし、理性を本能が殺していった。


こうして俺たちはまた心の隅で来年もこの酒を飲むことができるようにと願うんだろう。




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