落雲の慟哭
壁伝いに降りてきたはいいがエレンが劣勢なのは明らかで、顔は抉られ体のあちこちから煙を上げている。
「エレン!だめだ!!殴り合ったってどうにもならない!!壁まで来るんだエレン!!戦ってはだめだ!!」
アルミンが叫ぶ。
が、聞こえていないのか鎧の巨人に殴り掛かった。
「まずい!!」
「我を忘れたか!?」
カウンターを食らわされる。
しかし予想に反してエレンは拳を躱して懐に入り、鎧の巨人を投げた。
「おぉ、鎧を投げたぞ!」
「あれは、確か・・・アニがやってた技だ・・・」
ぐるりと一気に体制を変え、極め技をかける。
「アァアアアアアアア!!」
そして鎧の巨人の右腕を引き千切った。
そのことに兵達は湧くが、所詮腕一本では足止めにならない。
地面に降り、エレンに聞こえる範囲で近づく。
「エレン!!聞こえるか!?一旦壁まで下がれ!」
俺の声が聞こえたようで、エレンの視線がやっとこちらを向いた。
「あいつらの目的はお前を攫うことだ!今はその阻止を最優先にする!!」
「・・・ギルバート分隊長!ですが・・・」
「あいつはそんな簡単に倒せる相手じゃない!今は何よりもエレンの無事だ!お前も下がれ!」
ミカサは大人しく壁にワイヤーをかけ、エレンも壁に近寄ってきた。
「エレン、いい判断だ」
しかしさっきも言った通り、今逃げ切るのは難しい。
その為にはどうしたって奴の足止めをする必要がある。
エレンの肩に乗り、鎧の巨人から目を離さずに話す。
「お前を無事に逃がすにはあいつの動きを封じる必要がある。関節技で足を破壊するのが一番いい方法だ。刃が通らない以上、俺達はとにかくやれることを考える」
エレンが頷いたのを確認し離れた途端、鎧の巨人がタックルで突っ込んできた。
「な!?」
「速い!!」
急に素早く動くようになったが・・・。
「本当に全身が石像のように硬いのならあんな風に動けないはずだ・・・。昔の戦争で使ってた鎧にも・・・人体の構造上鉄で覆えない部分がある。脇や股の部分と、あとは――」
「膝の裏だな。ミカサ!ヤツが倒れたらやるぞ!」
「・・・了解!」
そしてエレンは鎧の巨人を羽交い絞めにし、共に倒れこんだ。
「今だ!!」
ハンジの予想通り膝の裏側は硬くなく、ミカサと肉を削ぐことに成功する。
これで有利になるはずだ!
「いける!!」
「裏切り者を引きずり出せ!!」
誰もがエレンの勝利を確信した。
しかし、
「!?」
鎧の巨人はエレンに羽交い絞めにされたまま地面をずって移動した。
何だ、あの行動が無意味だとは思えないが一体何の意味が・・・。
「オオオオオオオオオオオ!!」
突然鎧の巨人が咆哮を上げる。
巨人を呼んだのかと辺りを見回すが、その姿は見えない。
「上だぁ!!避けろおおおおお!!!」
その叫びに上を見上げる。
そこには――――。