空気は凍て付く




 
それは中継地点であるエルミハ区でのこと。


「ようやくアニの身辺調査の結果が届いたよ」
「やっとかよ・・・で?同郷者とか出たのか?」
「うん。ライナー・ブラウンとベルトルト・フーバー」
「は・・・?」

意味が分からない、という様子でエレンが声をこぼす。

「まぁしかし・・・5年前当時の混乱のせいで戸籍資料なんかどれも大雑把な括りでいい加減なもんだ」
「届くのが遅れたのもそのせいか」

しかもその2人は”誤った”企画書によってエレンが右翼側にいると知らされていたグループらしい。
女型の巨人が現れたのも右翼側だった為、無関係とは言い切れない。

「一応・・・訓練兵時代の3人の関係性などが知りたい。どう思う?」
「・・・ライナーとベルトルトが同郷なのは知ってましたが、アニとその2人が親しい印象はありません」
「オレも・・・2人がアニと喋ってるのは見たことがないような・・・。まぁ・・・アニは元々喋らなかったけど・・・」
「私は・・・覚えていません・・・」

ミカサのは置いといて・・・2人の言葉はどちらも否定的なものだ。
エレンは更に否定の言葉を続けていて、アルミンもそれに肯定した。

「僕もそう思います。ライナーは僕とジャンとで「女型の巨人」と戦っています。ライナーは危うく握り潰される直前で―――!」

突然話すのを止めたアルミンにエレンが「どうした?」と問う。

「ライナーは逃げられたんだけど・・・。アニは急に方向転換してエレンがいる方向に走って行ったんだ。僕も、推測でエレンは中央後方にいるんじゃないかと話してたけど・・・アニに聞かれる距離ではなかったし」
「まさか、それって・・・」
「話してたって・・・その3人で?エレンの場所を気にしてる素振りは無かった?」

アルミンの目が大きく見開かれる。

「エレンの場所の話をしたのは・・・、ライナーにそのことを聞かれたからでした・・・。それに・・・あの時「女型の巨人」が凝視してた手のひらに刃で文字を刻むこともできたかもしれない・・・。ライナーなら!」

誰も知らなかった同郷という事実。
人の目を逸らす為に隠しており、その裏で繋がっていた可能性は高いと思われる。

「は・・・?何だそりゃ・・・何でそんな話になるんだ」
「エレン!全員聞け。もしその2人を見つけても疑っていることを悟らせるな。もちろんアニ・レオンハートの存在にも一切触れるな」
「うん。彼らがアニの共謀者であってもなくても、彼らを上手く誘導して地下深く幽閉する必要がある」








まったく、人間も疑わなくちゃいけなくなるとは。
あの2人はユミルを理由に地下を通るように仕向ければいいだろう。
そう考えたのと、後ろから「エレン!!逃げて!!」と叫び声が聞こえたのは同時だった。
咄嗟に振り向くも一歩遅く、”超大型巨人”と”鎧の巨人”が姿を現した。




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