どこか遠くを見るような




 
壊された箇所を特定するため、壁に近いウトガルド城を目指して十数時間。
陽が昇り、空が白んできた。

「!見えたぞ!」
「巨人があんなに・・・!」

城はほぼ崩れ、巨人が何かに群がっているのが遠目でも確認できる。

「誰かいるのかもしれない・・・」
「ハンジ、後続は任せる。1・2班とミカサは俺と来い!巨人の討伐にあたる!」

班員達の返事を受け、機動装置を手に馬の腹を強く蹴った。







「あらかた片付いたか」
「はい。周辺にも巨人の姿は確認されません」
「ん、了解」

目の前の人だかりの中心には腕と足を切断されボロボロな姿の少女が一人。
あれが”ユミル”・・・。
そしてその少女を介抱しているのが、

「私の名前・・・ヒストリアって言うの・・・」

司祭の言ってた貴族の娘クリスタ・レンズ・・・いや、ヒストリア・レイスか。







「どうか!信じて下さい!本当なんです。ユミルは私達を助けるために正体を現して巨人と戦いました!自分の命も顧みないその行動が示すものは我々同志に対する忠誠です!」

怪我人を介抱する為に一度壁まで戻ってきた。
クリスタが強い瞳と声で訴えているのは、"巨人になれる人間である"ことを隠していたユミルが人間の味方であるということだ。
現在ユミルは意識を失っており当然本人の口から話されたことではない。
つまり、これは彼女の願望だ。

「これまでの彼女の判断がとても罪深いのも事実です。・・・人類にとって最も重要な情報をずっと黙っていました。おそらく・・・それまでは自分の身を案じていたのでしょうが・・・。しかし彼女は変わりました。ユミルは我々人類の味方です!ユミルをよく知る私に言わせれば彼女は見た目よりずっと単純なんです!」

隣で聞いていたハンジが「そうか・・・」と呟く。

「あぁ、もちろん彼女とは友好的な関係を築きたいよ。これまでがどうであれ、彼女の持つ情報は我々人類の宝だ・・・仲良くしたい。ただね・・・彼女自身は単純でもこの世界の状況は複雑すぎるみたいなんだよね・・・」
「・・・本名はヒストリア・レイス。違うか?」
「・・・はい、そうです」

これで確定か。
彼女を司祭の許に連れて行けば壁の謎が明かされる。
このまま何も起こらずにいければいいけどな・・・。
駐屯兵団先遣隊が壁に穴を発見できなかったと報告しているのを離れて聞きながら思い出していた。




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