どこかへ流れる





エルミハ区は避難している人間でごった返しになっていた。

「こっから先はもう巨人の領域になるよ」
「エレン。馬には乗れるか?」
「えぇ・・・体の力が戻ってきました」
「無理はし過ぎるなよ。モブリット!連れて行ってやってくれ」
「はい。西側のリフトに用意してある、急ぐぞ」

ふと隣を歩いていたハンジが消え、後ろを振り返る。

「ハンジ?」
「分隊長、急ぎましょう」
「・・・ちょっと待って。・・・何か、気持ちの変化はありましたか?」

ハンジは司祭に訊ねるが、尚も口を閉ざしたまま。
その様子にとうとうハンジが声を荒げる。

「時間が無い!!わかるだろ!?話すか黙るかハッキリしろよお願いですから!!」
「・・・私は話せない。他の教徒もそれは同じで変わることはないだろう・・・」
「それはどーも!!わざわざ教えてくれて助かったよ!」
「・・・それは、自分で決めるにはあまりにも大きなことだからだ」

司祭の口ぶりにその場にいる全員が聞く体制をとる。

「我々は代々強固なる誓約制度を築き上げ、壁の秘密をある血族に託してきた。我々は話せない。だが・・・壁の秘密を話せる人物の名を教えることならできる・・・」

つまり、

「責任をその人物に押し付けて、自分の身を守ってたのか」
「そうだ・・・」

それは決して褒められたものじゃないだろう。
でも今はそんなことより司祭の話の続きの方が重要だ。

「その子は・・・3年前よりその血族の争いに巻き込まれ、偽名を使って身を隠している。その子はまだ何も知らないが・・・壁の秘密を知り、公に話すことを選べる権利を持っている」

今年調査兵団に入団したばかりだという、その少女の名は―――。







「え・・・」
「あ、あいつが?」
「・・・?え、誰・・・?」

驚愕に顔を染めるエレンたちとは対照的に俺達は首を傾げる。
その名に心当たりがまったくないからだ。
しかし104期の新兵だということは・・・。

「今、前線にいるんじゃないのか」
「そうだ・・・!」
「行きましょう!とにかく現場に急がないと!」
「待って!まだ104期全員の名前を知らないんだけど・・・」
「あの一番小さい子ですよ!」
「金髪の長い髪で・・・えーと、あと・・・かわいい!」

ハンジの言葉に次々と特徴が上げられる中、ミカサの一言に俺達は息を呑んだ。

「ユミルといつも一緒にいる子です」
「え・・・?」
「ユミル・・・?」

その名は、俺達には聞き覚えのありすぎるものだった。




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